第四十一話 ラール絶望する
ラールside
ラールは多くの観衆たちの前で余裕そうな表情を浮かべながら自身が持つ白銀の剣ラリカードを手にしてレインへ向けた。
(まさか兄貴の奴生きていやがったとはな。てっきりくたばったかと思ってたが)
ラールはレインが死んだと思っていた。
しかし目の前にレインが居た。
正直驚いている。
(だがどうやって経験値0で生き延びてきたんだ? おまけに大層な装備までして。仲間の小娘も経験値が入るとかぬかしてやがったけど一体どういう事だ?)
ラールの頭の中で疑問が渦巻く。
(まあいい。圧倒的な実力差を見せつけてやるか。虐め甲斐があるのはやっぱり兄貴だぜ)
◇
俺は魔剣アーレードを手にして戦う。
ラファに鑑定してもらうか迷ったが、一対一の勝負だからずるはしない事にした。
「行くぞ兄貴!」
ラールが俺に目掛けて攻撃をする。
だが俺は余裕で回避する。
何せ俺は俊敏のステータス値が無限だ。
「何だこの速さ!? これが兄貴なのか!?」
「本気で行くぞ」
俺は本気で行く。
真剣勝負だ。
「スキル煉獄発動」
これで俺の攻撃力は2600に1000プラスされて3600。
それの二倍だ。合計7200だ。
「はああああああああああああああああああっ」
「がはっ!」
俺の攻撃を喰らうラール。
そして遠くまで吹っ飛んだ。
「HP7200以上だったんだな」
「馬鹿な。あの兄貴がこんな攻撃力と俊敏だと。ど、どういう事だ」
「俺は別の方法で強くなったんだ。そしてまだまだ強くなる」
俺は剣をラールに向けた。
ラールは怯えた表情と同時に悔しさを滲ませている。
「今回は義弟として一度だけ見逃してやるよ。次は容赦しない」
「ぐっ――」
俺は観衆の前でラールに恥をかかせた。
それと同時に【魔剣聖】のラールが負けたと多数の魔導士が驚愕する。
「おい巨竜、ブラックスライムの次は魔剣聖のラールかよ。凄すぎるだろあいつ」
「一体何なんだ!?」
「俺調べたんだけどよ。外れスキル【経験値0】を授かったらしいぜ。なのにあんな強さどうなってやがるんだ!?」
観衆達が一斉にざわつく。
俺の名が少しだが知れ渡った。
「行くかアイリス、ラファ」
「はい。行きましょうか」
「そうだな。次の国が楽しみだ」
俺はこの日ラールに勝利した。
外れスキル【経験値0】の恐ろしさをラールは目の当たりにした。
ラールside
「くそがあああああああああああああああっ!」
「ラール様落ち着いてください」
「これが落ち着けるか。僕に、僕によくも恥をかかせてくれたな。無能兄貴の癖して。今のは、今のは偶然だ」
「今のラール様ではレイン様に勝てませんよ。実力差が違います」
「くそ、何故だ、何故あんなスキルや攻撃力を持っている。あり得ないんだ」
ラールはレインの実力を認められなかった。
しかし敗北したのは事実である。
「くそがあああああああああああああああああっ!」
レインが去った後のフレンディア国に魂の叫びが木霊した。
その叫びは醜かった。
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