第三十五話 ラールも噂を耳にする

 ラールside


 ラールは現在ユリアと共にフレンディア国へ来ていた。

 丁度レイン達がブラックスライム討伐に向かった後に。


 「おい知ってるかあのガキ次はブラックスライム討伐に臨んだぞ」

 「港で聞いたんだけどよ。何か世界一の外れスキル持ちだってよ」

 「そんな訳ねえだろ。だったらあの巨竜に勝てるはずがねえ。お前も見ただろ」

 「ま、まあそうなんだがな」


 ラールとユリアの近くで誰かについて話している男共。

 その誰かとはレインの事なんだが、ラール達はまだ知らない。


 「おいその噂の人物とは誰か分かるか?」

 「誰だて――魔剣聖のラール!?」

 「そうだよ僕が魔剣聖のラールだ。ここに巨竜が現れたと聞いたが」


 ラールは相手を見下す態度と声色でそう高圧的に聞いた。


 「ああ巨竜が突然このフレンディア国に襲来したんだ。三分の一を破壊した。今も修繕中だろ」

 「そうだね。どうやらかなりのモンスターだと聞いたが。今巨竜は?」

 「もう討伐されたよ」

 「何!? 誰が」


 ラールは男の話を聞いて驚きを隠せなかった。

 そして歯軋りをする。


 「誰だと聞いている」

 「れ、レインってガキだよ。そ、それ以上は知らねえよ」

 「れ、レインだと!? ほ、本当にその名前なのか!?」

 「ああそうだ。確かに名前はレインだ」


 ラールは驚愕の余り動けなくなる。


 (やっぱり生きていたのか? だが巨竜を倒しただと!? あり得ない。あんな無能兄貴が倒せるはずがない。同名か?)


 ラールは男にもう一つ質問する。


 「どんな攻撃を使ってた?」

 「ああ。見ていたが漆黒の斬撃を放っていた」

 「ありがとう」


 ラールは安堵と共にやっぱりなと言う表情をした。


 (兄貴じゃなかったか。あの無能兄貴が漆黒の斬撃なんて出せる筈が無い。何せ僕とは違って経験値0の外れスキル持ちなんだから)


 ラールはユリアと共に冒険者ギルドから出て街をぶらつく。


 「レイン様凄いですね。大活躍ですね」

 「あれは同名の別人だよ。二度とその名を口にするな。穢らわしい」


 ラールはそう言うとユリアより先に歩いて行く。

 ユリアは首を傾げた。


 (あーあ無能兄貴が生きていたら虐めてやろうと思ったのにな。それにしても別人とはいえ兄貴の名前を聞くと腹が立つな。出会ったら殺してやるか)


 ラールは下卑た笑みを浮かべた。

 だがラールは知らない。別人ではなく、巨竜を倒したのがあの兄貴のレインだって言う事を。

 外れスキル【経験値0】の恐ろしさを。


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