第7話 セシル9歳

母親マリアンヌが死んで3年が経ち、セシルは9歳になった。

この世界では9歳になると教会で洗礼式を行う事になっている。

洗礼式により、自分の将来が決定するのだから人生で一番重要な式であるのだ。

神官から自分の職業が決定する為である。

貴族にいても職業が悪いと跡継ぎになれない。

セシルとってはこの洗礼式が一番チャンスだと考えていたのである。

理由は二つ、一つは冒険者になって、このベルスタから出て行きたいのだ。

冒険者になるには15歳になってからで、9歳のセシルには出来ないのだが、実は12歳から見習い冒険者として登録が出来て、15歳になったら正式に冒険者として活動が出来るのである。

もう一つはルミナスから言われた事で、教会に入ってお祈りをするとルナミスとの会話が出来るのである。

ルナミスからいくつか聞きたい事があって、確認をしたいからであったのだ。


9歳になってセシルの周りに変化があった。

セシルの身の回りは自分自身で行っている。

アルベルトとアンリエッタは12歳になって王都にある学校に行っている。

アルベルトは騎士養成学校でアンリエッタは魔法学院に入った。

次にこの街ベルスタの状況であった。

以前はマリアンヌが役人制度を使って領民の生活を快適にしていたのであったが、ロベルトとヘンリエッタによってそれを廃止、その代わりにロベルトがヘンリエッタの兄弟や親族を主要な役職に抜擢してベルスタを統治していた。

しかし、そのお陰で領民から不満が起きているのも事実であった。

その理由はヘンリエッタの金使いが荒いのが原因とその息子と娘も同様にお金を沢山使っているのであった。

それにはロベルトは黙認しており、ベルスタに住んでいる領民は別の所に逃げようと考えていたのだが、ロベルトの新たなる法律により、此処から出る事が出来ないのであった。

それは、移住する領民に対して税金を払う事になるのだが、その金額が領民の全財産を領主に渡すのなら移住しても良いと言う法律を作った為であった。

それが出来ない領民は此処にいるしかなかったのであった。


そして、セシルの洗礼式をする日が来たのであった。

セシルはボロボロの服を着て教会に行き、そこの神官に話をするのであった。


「神官様。セシル=ガイアス、本日の洗礼式に来ました」


『お前が落ちこぼれのセシルか? 良いだろう。そこの部屋に入れ。それとこのカードを持って祈るのだ』


「分かりました」

 セシルは奥の部屋に入ると女神像の前に祈りを捧げた。

すると目の前が真っ白になって、前に立っていた女性.....ルミナスが立っていたのであった。


『ようこそ来ました。セシル』


「お久しぶりです」


『貴方にはもっと楽な生活をしようとしたのですが.....』


「気にしなくて良い。それより質問がある」


『なんでしょうか?』


「俺の職業を隠蔽する事が出来るのか?」


『出来ますよ? それがどうしてなのですか?』


「俺は貴族には興味がない。冒険者になりたいのだ。なって世界を回りたいからな? それは貴方にも都合が良いと思うのだが?」


『そうですね。これからの事を考えるとそれが一番良いかもしれませんね。では隠蔽のスキルを渡します。それを使って下さい。それと....もう一つ』


「もう一つって?」


『それは、貴方が12歳になってからね。12歳になったら私からプレゼントがあります。大切にして欲しいですわ』


「分かった」


『それではこの辺で.....頑張って下さい』

ルミナスは消えて行くのであった。

早速セシルは隠蔽を使って職業をレベルを変更した。

そして、部屋を出ると神官とロベルトとヘンリエッタが立っていた。


「神官よ。奴の職業とレベルを教えてくれないか?」


「これはガイアス子爵夫妻。この職は......「無職」、レベルは1でございます」


「ありがとう。そこでセシル。お前は我が家から別の場所に引っ越ししてそこで15歳まで生活しろ良いな?」


「分かりました」


「ヘンリエッタ頼む」

ロベルトはヘンリエッタに命令するとヘンリエッタは一つの魔導具を取り出してセシルに渡したのであった。


「この魔道具はお前が次の引っ越しする場所に転移するようになっているから、魔力をこの魔法具に込めなさい。それで貴方は引っ越し場所に飛ばされるから」


セシルは魔導具に魔力を入れると魔道具が光輝いてセシルの姿は消えていったのであった。


「ヘンリエッタ。彼奴は何処に飛ばしたのか?」


「貴方の思っている通りに「魔の森」の最深部に送ったわ。この場所結構人員を使ったのよ?」


「分かっているさ。俺に反対していた奴らに渡して魔の森に行かしたからな? 奇跡的に2人が戻って来て助かったわ。」


「戻って来た2人はどうしたの?」


「その後、処刑した。セシル誘拐の罪によってね。明日にでも公表するとするかのう」


「これでこの街は安泰ですわ。あははははは」


「お前も無茶はしないでくれないか?」


「それより、アルベルトとハミルトン侯爵令嬢との婚約の件はどうなっているのですか?」


「それは問題ないわ。主要な貴族を買収して、ハミルトン侯爵も受けるしかないだろう。 あはははは。それで俺は伯爵になるからな!」


ロベルトとヘンリエッタの二人は大いに笑うのであった。

だが、それがガイアス家の滅亡の第一幕の始まりであった。


セシルはヘンリエッタに貰った魔法具を握ってある場所に着いたのであった。


「此処は? まさか....魔の森?」

セシルは周りを見渡すと其処には森しかなかった。


「あのバカ達、俺を魔の森に送るとは。しかし、これは俺に取ってはいい訓練になりそうだ。感謝するぞ。バカ夫婦」

魔の森はセシルに取っては一番の鍛錬場所になった言うまでもなかった。

セシルは森を探索していくと其処に大きな湖がある場所に着いた。


「この湖は....聖属性の水ではないか? なら此処を拠点として活動をするか?」

セシルはこの湖の近くに鍛冶スキルで家を建てて生活をして行くのであった。


そして、更に3年に月日が経過してセシルは12歳になったのである。

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