ドタバタ休業→みんなでお出かけ①

 店を休業して俺の家に来る事を即決したほなみさんのその後の行動はとても速いものだった。

 臨時休業を知らせる張り紙を書き、ドアに貼り付ける。その後はボストンバッグに荷物を詰め込み、少し大きめのパーカーとデニムという動きやすい格好に着替えて鼻息をフンスフンスと荒くさせながら俺とサクラコの前までやってきた。


「孝文さん、準備できましたっ!」


 ここまでものの10分弱。速いにも程があるだろうに。サクラコなんてほなみさんの素早さを見て拍手しちゃってるよ。


「いや、うん……準備できましたって言われても、まだ車検の最中だから行けないよ」

「えぇぇーっ⁉︎」


 急いで準備をしてしまったほなみさんには悪いが、車検が終わって車を受け取れるのは十九時以降となっている。そして今はまだ十五時過ぎ。まだまだ時間がある。


「たしか、十九時だっけ?」

「そうなんだよなぁ。それまでだいぶ暇になる」


 あと四時間弱も暇になるわけだからどこかのタイミングで晩飯を食べに行きたいが、それ以外は別に予定もないからなぁ。コーヒー飲みながら雑談でも再開するか?


「じゃ、じゃあ……」


 ほなみさんが少し控えめに手を上げた。何か暇つぶしできる事を提案してくれるのだろうか。


「ちょっと、お出かけしませんか?」


 ほなみさんの提案により、俺たちは車検が終わるまでお出かけすることにした。



「フンフンフーン♪」


 鼻歌のリズムに合わせてブンブンと繋いだ手を振られる。

 今、俺とほなみさんは顔面が真っ赤になっている。

 ――というのも、ほなみさんのお出かけの提案は特に「どこに行きたい」という事では無く、ただ散歩をしたかったというだけに過ぎになかった。

 なので俺たちは目的地も無く気楽に店から出てみたが、そこでサクラコが突然「手、繋ご」と言ってきたのだ。俺は当然渋ったさ。ここは都会だから人の目がたくさんあって恥ずかしいからな。

 そうこうしてるとほなみさんがサクラコと手を繋いでたんだ。大層微笑ましい光景だったよ。良い目の保養になりました、って手を合わせてたらサクラコが反対の手を俺の前に差し出してんの。どうやらサクラコは、俺とほなみさんに両手を繋いでほしいとかいう我が儘な思考をしていたんだ。

 そして出来上がったのが親子っぽい光景ってわけ。これ、マジで恥ずかしい。サクラコは心底楽しそうにしてるんだけどさぁ……。

 あっ、ほらみろ向こうにいるおばさま達がこっち見てクスクス笑ってやがる。


「た、孝文さん……これ、結構恥ずかしいですね……」

「うん、そうだね……なんというか、親子っぽいというか……」


 更に俺たちの顔は赤くなる。言葉にすると、やっぱり恥ずかしい。

 俺とほなみさんはそれから無言になり、行先をご機嫌なサクラコに任せ手を引かれるまま着いていくのだった。



 手を引かれ歩くこと数分。俺たち人通りの多い場所へと出ていた。

 流石にこんな場所で三人で横一列に並んで歩くのは迷惑なので、俺だけ繋がれた手を離し後ろを歩く形で着いている。

 久しぶりに人の多いところに来たせいが、人に酔ったような感覚になっているのを感じる。いつもは静かな環境で動物達の鳴き声か農作機の音を遠くから感じるような環境にいたからとても騒がしく感じるのだろう。……うぅむ、静かな場所に行きたい。

 そんな事を思っているが、行先の舵を取っているサクラコは周りをキョロキョロと見渡し、興奮気味に目を輝かせていた。


「ほなみちゃん見てっ! ケーキ屋さん!」

「ここね、テレビで紹介されるくらい人気なお店なんだよ」

「へー、そうだんだっ! ……あっ、見て見てほなみちゃんっ!」


 「あっちに行きたい」、「次はあっち」と目的地をどんどん指定していき、ほなみさんはそれに着いていく。サクラコにとってはどれもテレビで見たことがあるだけで実際に見たのは初めて尽くし。好奇心旺盛なサクラコにとっては魅惑が尽きないだろう。


(……あぁ、なんかいいなぁ)


 サクラコに手を引かれるほなみさんは少し大変そうだけど、二人とも笑顔でとても楽しそうだ。なんだろう、キラキラしてるって言うのかな。


「孝文ーっ! 何してるの置いてくよー!」


 二人を眺めていると、サクラコに手を振られる。いかんな、ちゃんとついて行かないとはぐれてしまいかねん。


「はいよー、今行くー」


 それから俺達三人は、サクラコの興味が赴くまま街をブラブラと探索するのだった。




●あとがき

作者「遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

最近投稿が滞っていてすみません。

最近イラストの練習をしていて、そっちに時間を使っていました。

とはいえ時間を使っていた事もあり、それなりに上達してきました。

いつかは孝文くんやほなみさん、サクラコといった主要キャラを描いてみようと思います。」

烏骨隊長「……我は描かないのか」

クロエ「私も描きなさいよ」

作者「……動物はそのうちね」

クロエ「描いた絵はTwitterに載せられてるらしいから気になる人は見に行ってみるのもいいわね」


作者Twitter→@Raio_Retouch

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高卒サラリーマンが脱サラして田舎でスローライフするだけの話 らいお @Raio0328

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