閑話-嫁入り準備の花嫁修業?②

 エプロンを購入したほなみは、その後はふきんやテーブルクロスといった軽めの物を買い、少し早めではあるが昼食を取った。

 久しぶりの外食だからと言って見栄を張らず、安めのチェーン店で済ます。最近は店の売り上げが伸びてきているとはいえ、赤字な事には変わりないので少しでも出費を抑える必要があるからここは我慢が必要だ。

 まだまだ長年兄が貯めていた貯金はある。だから赤字が続く事はまだ大丈夫だ。だが、これをずっと続ける訳にはいかない。そう言った事もあり、ほなみはここ最近の伸びている客足を途絶えさせない為に奮起していた。

 今日は不運にも水道とガスの点検が重なってしまい休業にせざるをえなかったが、新しいエプロンやクロスを購入できた。見てくれが良くなることは売上にも繋がるので今回の休業は僥倖だったのではないか、とほなみは思っている。


「お腹も膨れたし……次はフライパンかなぁ。コゲがこべり付かないやつがあればいいなぁ」


 フライパンの希望を言いながらほなみは百貨店内を進む。

 今ほなみが使っているフライパンや鍋は、底面が煤で汚れ、錆も浮いてきている。それにより熱伝導が悪くなり、焼き上がりにムラが出来てしまっていたりもした。料理の質を上げるためには、新しい道具を買う必要があるという事だ。


「おぉー、いっぱいあるなぁ」


 キッチン用品の売っている店に着いたほなみは店内を物色し始めた。

 だが、商品説明にダイヤモンドコーティングだったりよく分からない単語が多く書かれているせいで何を買えばいいのか分からなくなっていた。


「うぅん、安くて良いのないかなぁ」


 色々と手に取って確認してみるが、何が良くて何が悪いのかが分からない。もちろん値段が高ければより良い物なのだろうが、そんなに高い物は買えないのでお手頃価格……五千円しないくらいの物を買って長く使いたい所だ。


「うぅーん……よく分からないけど、これでいいやっ!」


 手近にあった四千円程度のフライパンを購入する事に決めた。適当に取った割にはそこまで重くなく、長時間料理していても手が痛くなりにくそうで良い物を選んだのではないか、と思う。


「フンフーン、さてお次は~♪」


 ほなみは鼻歌交じりに他の道具も選び、メモに書かれている道具を揃えていくのだった。






 買い物が終わるころには午後三時頃になっており、ほなみの両手は買い物袋で塞がっていた。これから徒歩で帰ると思うと少し嫌になってくるくらいの重さの荷物で、少し口を尖らせる。


「……重いなぁ。車でもあれば楽なんだろうけど、私免許持ってないしなぁ。いつか、時間ができたら免許を取りに行こうっ!」


 いざ時間ができても実現させないであろう事を呟きながらほなみは帰路につく。両手には沢山の荷物、充実した休日となった事だろう。



 その日の晩、ほなみはいつものようにスマホを握りながら部屋の中をうろうろと歩き回ったり止まったり、深呼吸していりしてた。


「ふぅー……よしっ!」


 いつものルーティンだ。孝文と電話をする直前は、いつも高揚した気持ちを抑えるように深呼吸している。

 ある程度落ち着いたと思うと、意を決してスマホを操作し、孝文に電話を掛ける。

 一回、二回とコールが鳴り、三回目の途中で孝文は電話に出た。


「あっ、孝文さんこんばんはっ!」

『こんばんは、ほなみさん。今日も元気だね』

「今日はとっても疲れたんですけど、とっても充実してたんですよ!」

『へぇ、確か今日はお店が休みとか言ってたよね。何かしてたの?』

「今日は、お買い物に行きました! フライパンとかお鍋とか新調して――あっ、聞いて聞いて、凄くカワイイエプロンがあったんですよ!」

『……ふふっ、そっか。そんなにカワイイエプロンがあったんだね。それを買ったの?』


 最近のほなみは孝文との会話に慣れてきたのか、稀に敬語が抜ける。ほなみ曰く誰かと話すときは自然と敬語になってしまうようだが、孝文相手だと稀に敬語が抜ける事を本人は認識していないが、聞いている孝文はこの進歩に笑みを浮かべずにはいられなかった。

 この事をお互い知るのは、まだ少し先の話。





●あとがき

 へぇ、四千円のフライパンなんて良いの買うね。

クロエ「そうね、随分と良い値段のするフライパンを買ったわよね」

 え、クロエはヤギなのにフライパンの相場を知っているのかい?

クロエ「本編の私は知らないだろうけど、あとがきの私は知ってるわよ。なにせこのあとがきは言ってしまえば神の領域みたいな物よ? 全知全能のクロエと崇め奉りなさい?」

鷺ノ宮「な、なにぃっ、全知全能だとっ!? ……フフフ、相手にとって不足無し、我が暗黒炎舞ダークフレイムインフェルノに焼かれて消え去ってもらうぞっ!」

クロエ「……はぁ、面倒なのが出てきたわね。作者、静かにさせて」

 はいはい分かりましたよ……おいこら厨二病、君ごときがクロエに勝てるわけがないだろ。そもそも何だダークフレイムなんちゃらって。せいぜいマッチの火程度の火力しか出ないんだろ?

鷺ノ宮「もっと出るもん! 凄い炎だもん! 真っ黒いんだもん!」

 はいはい、妄想も大概にしておきましょうねー。

鷺ノ宮「ちゃんとお話聞いてよぉぉぉぉぉぉぉ!」

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