第17話 台風の中の僕達4
唇から媚薬とはよく言ったものだ。
彼の舌が僕の舌に絡まると、
ゾクゾクっとした。
そうなると、彼の媚薬が僕の体内を侵食していくのに
そう長くは掛からなかった。
彼のキスは脳が溶けるかと思うほど気持ち良かった。
矢野君は僕のシャツのボタンを外すと、
ベッドの上に押しやり、
キスをしながらいつの間にかパンツさえも脱がせていた。
「ねえ、矢野君、僕は……
僕は何をしたら良い?
どうしたら君も気持ちよくなってくれる?」
「陽向が気持ち良いと思う事をしてみろよ」
そう耳元で囁かれた途端、
「あっ……」
と吐息が漏れたかと思うと、
ビクビクビクッと身体がしなって、
僕は早くもいってしまった。
“ウソ……”
僕は冷や汗がダラダラと出るような思いだった。
暫く沈黙が続いたあと、
「お前、感じやすいんだな……」
と矢野君がぼそっと言った。
「ご、ごめん……
矢野君の声って囁くと凄く低くって……
おへその辺りがゾクゾクって……
僕1人でする時はこんなに早くは……
それに耳元での囁きは反則だよ〜
腰が砕けちゃうよ~」
言っていることがチグハグだ。
僕は穴があったら入りたかった。
まさか、未だ何もしないうちにいってしまうとは……
”矢野君、僕から誘ったのに呆れちゃってるかな?“
辺りは一向に暗くて彼の表情は見えない。
途端に彼を誘った事が少し恥ずかしくて、
表情の見えない矢野君が何を考えてるのか怖くなった。
「矢野君、汚れちゃうね、
もし僕で興奮出来なかったらもう……」
そう言いかけて、矢野君から離れようとした時、
「待て」
そう言って引き止められた。
「大丈夫だ」
そう言うと、彼は今出したばかりの物を僕のお腹から掬い上げた。
「矢野君……?」
「光」
「え?」
「俺の名は光だ」
「光……」
そう言うと、矢野君は僕の物を掬ったのとは反対の手で僕の手を掴んだ。
「矢野君?」
「光だ」
「光……? 一体何を……」
そう言った時、
掴んだ僕の手を自分の方へと引き寄せ、
「ほら、大丈夫だ。分かるか?」
と自分の下腹部の方へと伸ばさせた。
「これ……矢野君の?
僕でちゃんと興奮できるの?」
彼の物は立派に反り立っていた。
「心配するな、お前はバカだけど、
十分に可愛いよ」
矢野君のそのセリフに又気持ちが大きくなった。
「見たい! 矢野君の見たい!
ねえ、懐中電灯!」
そう言うと、矢野君は
「アホか!」
と一言言って、掬った僕の物で後ろを攻め始めた。
「イタタタタ……
矢野君、痛いよ、痛いよ」
初めて入って来た矢野君の指は想像とは違ってとても痛かった。
「スマン、最初は痛いと思う……
でもヒート起こしてたらそこまでないはずだぞ?
ここも自然に柔らかくなってるはずだし……」
「ちょっと〜誰と比べて言ってるの〜?
僕のはまだ堅い蕾なの!
熟れてないの!
痛いものは痛いの!」
「お前大袈裟だな〜
痛がりなのか?
少し我慢しろ!
ちゃんと解さないと大変な事になるからな」
「だったら早く言ってよ〜
僕、痛い心の準備なんてやってなかったよ〜
BL本やビデオなんてみんなサッと入ってるのに何なのこの痛さ〜」
「なんだそれ? お前、何処の耳年増だよ?
漫画と一緒にするんじゃない!」
「だって~ あれって面白いんだよ?
キュンキュンするし!
矢野君にもお勧めだよ?」
「お前の話を聞いてると頭痛くなってくるよ……」
「え~ 痛いなんて聞いてないし!」
「だったら止めるか?」
「嫌だ! 僕、矢野君とちゃんと繋がりたい!」
「だったら我慢しろ。
直ぐに気持ち良くなる」
「ねえ、矢野君のそれ、ちゃんと入るかな」
苦し紛れにそう尋ねると、
「やっぱりお前はバカだな」
と矢野君は言った。
「僕、バカでもアホでも
矢野君が僕で興奮してくれるんだったら
どっちでも良いよ」
彼はハハハと小さく笑うと、
「指増やすぞ」
そう言って更に奥へと進んできた。
「苦しい〜
本当に皆んな最初はこうなの?
もしかして矢野君が下手なんじゃないの〜?」
「お前な〜 囁いただけでいったのは誰だ?!
お前か?! お前なのか〜!
まったく、しおらしくなったかと思えば大きな口叩きやがって。
この口か? この口なのか〜?!」
そう言って矢野君が僕の口をつねった。
「痛いよ、痛いよ~
もう! 上から下まで~
少しは優しくしてよ~」
「でも、だいぶ柔らかくなったぞ。
もうそこまで痛みも感じ無くなっただろ?」
確かにジンジンとしてはいるが、
ヒクヒクとしているのも感じる。
「うん、うん、矢野君、僕もうダメかも……
腰振りたい……」
そう言うと、矢野君はゆっくりと僕の中に入って来た。
「やっぱりちょっときついな……
お前大丈夫か?
痛みはどうだ?」
「痛みは大丈夫……でもすごい異物感……
苦しい〜 でも、でも……
凄く気持ち良い……
矢野君の形が僕の中で分かるよ……
これがセックスなんだね……」
「ほら、ここ触ってみろよ……」
そう言って矢野君が僕たちのつながった場所に僕の手を導いてくれた。
「凄い! 矢野君のが入ってる!
僕たち、とうとうやったんだね!」
「感動してる所悪いが動いても良いか?」
矢野君は笑ってそう尋ねた。
次に僕達が気付いた時は朝が来ていた。
台風は既に通り過ぎた後で、
色々と飛んできた物が散らかっている中、
外の世界はいつもの穏やかな景色にもどっていた。
「信じられない……朝だ……
こんなにぐっすり寝たのは久ぶりかも……」
矢野君は朝起きるとボー然としていた。
「矢野君、昨夜は楽しかったね!
う〜一夏の経験か〜
今度は灯りがある時にやろうね!」
僕がそう言うと、
「お前は何処までいっても能天気だな」
と矢野君は静かに微笑んだ。
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