第3話
「ごめんなさい」
断られた。少し食い気味だった気もする。
「真弓さん。私この人の教育係嫌です」
「あらあら、青春じゃない。それにあなたたちお互い高校生だからシフトが被るとこ多くて都合がいいのよ。仕事でもよく会うから仲良くなっといたほうがいいわよ」
「でも、初対面でこんなこと言うひとと仲良くできる気がしません」
「あら、時給アップしようと…」
「やります」
二人は頭を下げて渚さんに手を差し出している俺を横目に話している。ゆっくりと、顔を上げて渚さんの表情を伺うとだれも寄せ付けない氷のような表情をしていた。
「お付き合いはできませんが、教育係の藤宮渚です。業務以上の付き合いはもつつもりありませんので」
バッサリと振られて放心状態の俺にたたみかけるように
「とりあえず、制服に着替えてきてください。早速始めましょう」
「き…今日はもう帰っていいですか?」
「ダメです」
有無を言わせぬ笑顔でこっちをみた。美人の笑顔怖い…
このファミレスは制服が人気で男性はシックなベストを基調とするウェイター。女性は軽めのベージュのウェイトレスの格好で、スカートは膝上なのが特徴だ。
「意外と似合ってますね」
「ありがとうございます。渚さんもお似合いですね」
「そう言うのはいいです、早速始めましょう」
そう言って連れられてきたのはホール。
今は午後5時ごろ、駅前とはいえそもそも利用者の少ない駅でまだ夕飯前の時間のため人は少ない。
「今日はここで接客の練習をします」
「了解しました!結構ファミレスとかにはきてるから、何をするかはわかっているつもりです」
「そうなんですね。でも一から説明します。あと、あんまり接客業を舐めない方がいいですよ。とりあえずお手本をやってみるから、拓也くんはお客さん役をやってくれませんか?」
俺はわかりました頷くと、一旦店を出て、再び入った。
「いらっしゃいませ、お客様は一名様でしょうか?」
さっきの氷のような表情が嘘のように柔らかい笑顔で迎えられる。
少しドキドキしながら俺がうなずくと、こちらの席をお使いくださいと案内される。
少しすると、お冷を持って帰ってきた。
「ご注文がお決まり何なりましたら、こちらのベルでお呼びください」
「と、まぁまずはこんな感じです。注文の打ち方とかレジのやり方とかは今度教えるので早速今の所までやってみましょう」
そう言って渚さんは一度店の外に出た。なるほど、実践型で教えていくのが渚さん流か。さっきのマネをすればいいんだろ?美人な渚さんを余すとこなく目で追っていたから余裕だと考えていた。
「いらっしゃ…」
「表情が固いです。やり直し」
「いらっしゃ…」
「笑顔が気持ち悪いです。やり直し」
「いら…」
「相手の目を見て接客してください」
渚さんの教えはなかなかスパルタだった…
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