6話 仲間、ゲットだぜ!

俺が魔王。全くピンと来ないけど、魔王ってどういう種族なんだ?


試しにステータスに書かれた魔王の部分をタッチしてみる。

すると、魔王という文字が拡大されて表示された。


種族:魔王【固有】???【名前なし】

獲得可能スキル数:制限なし


いや〜大した情報無かったな……


これから何をしたら良いのか全く教えてくれないタイプのゲームですかね。はい。



どうやらこの世界にはスキルというものがあるらしいけど、多分これは経験値稼いでレベルアップして、スキルポイント獲得って流れだと思うんだよな。



だから現時点では、スキルを獲得することはできないってことか。


ううむ、と俺は唸り声を上げる。

俺、生きていけるだろうか…………


不安になるが、実は俺はRPGゲームが大好きで、小さい時からよくプレイしていた。

ここはなんだかゲームみたいな世界だ。少なくとも前世よりかは楽しそうじゃないか!ワクワクしてきたぞ!



とりあえず、この池の辺りなら美味しい果物があるかも。しばらくここを拠点にするか……


まずは食糧調達だ!


俺は意気込みながらあたりを散策し始めた。


しばらくして、俺は小さい木の実がなっている木を発見した。実は紫色で、ツヤツヤしている。

例えるならブルーベリーに近い見た目だ。


でもこの木、高いなあ……

登ろうとしても幹がツルツルしているせいで、足が滑る。


揺さぶったら実が落ちてこないだろうか。

俺は手先に力を込め、めいっぱい木を揺さぶってみた。


ダメだ……ビクともしない。

レベル1だもんな…………強ボスキャラが存在してそうな場所で、俺雑魚キャラだもんな……


俺は小さくため息をついた。


「ここらへんに魔物って存在するのかな。

場所の分析ってできないの?」


『スキル《分析》成功しました。

【場所】紫水晶の針葉樹林

強力な魔物の住処。ここで採取できる果物や水晶は高値で取引される。魔王誕生の予言により現在は封鎖されており、入ることはできない。

推奨Lv.→進化形態6 総合→Lv.120』


視界に大きく表示される文字。


え、ここ封鎖されてんの!?

しかも強力な魔物の住処って書いてあるんだけど、俺レベル1だぞ!?推奨レベル120って!?ちょっと待って俺、魔物に会ったら確実に死んでしまう……


せめてエンカウントするならレベル2のスライムとか、レベル3のゴブリンとかにしてくれ〜……


っていうか、俺……元からスキルの《分析》持ってるわけでしょ?他にも持ってるスキルがあるかも。


「今持ってるスキルの一覧とか魔法の一覧とか見せて!」


『スキル一覧:《分析》《隠密》

魔法一覧:《闇属性魔法【固有】ブラックホール》』


ふむふむ……?

強そうな魔法をひとつ持ってる。固有だから魔王だけしか覚えられないものだったりするのかも。

スキルの隠密は非常にたすかる!強力な魔物が出たら隠密でやりすご…………


「グァア?」


「ひぃぃえええええええええっ出たーーーっ」


作戦を練っている間に背後から急に声がするものだから、俺は思わずチビりそうになった。

恐る恐る後ろに振り返ってみると、そこには紫のミニサイズの……恐竜がいた。恐竜っていう表現がいちばんしっくりくる。


大きさは成人男性の手に乗るくらい。目は大きくて、ふわふわとした毛並み。なんとも愛らしい姿だ。こちらを見て、首を傾げている。敵意は全く感じられない。


「え、めちゃくちゃ可愛い……こんばんは、君のお名前は?」

「グ〜」

俺の足元にすりすりと寄ってくるその魔物は、俺を母親と勘違いしている様子だった。


生まれたてなのかな?

分析してみよう!


「スキル、分析」

『《分析》成功しました。

シャドラ Lv.1 最終進化形態→破滅の暗黒竜

30億年に1度、天界から産まれるドラゴンの子供。生まれながらにして強力なブレスを持っている。成長速度が非常に速い。世界を滅ぼすと言われている。』


ええ!?めちゃくちゃ強そうな子拾っちゃったみたいだ。倒すという選択肢もあったけど、こんな可愛い子を殺すなんて……俺にはちょっと無理がある。


「俺と一緒に来る?」

「グァ〜!」


シャドラは目をキラキラさせながら頷いた。

とても世界を滅ぼすような子には見えない。


俺はそっとシャドラの頭を撫で、肩に乗せてあげた。


「よーしよし、君の名前は今日から「シグ」だ!レベル1同士仲良くしような〜」


「グァバ〜」


返事してくれるシグはふわふわのぬいぐるみのようで、俺はあまりの可愛さにメロメロだった。俺、絶対シグのこと守ってみせるからなー!


なんて思っていると、背後からガサガサと音がする。


「またなんか来た……スキル《隠密》!」

『スキル、《隠密》発動に失敗しました』

「嘘だろ!?」


隠密が失敗したら俺たち……


『スキル《分析》妨害されました。推測→Lv.50』



確実に……




「グルルルルルル……」




詰みだ!




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