悪魔くんと天使ちゃんとインキャくん!? 〜なんか朝起きたら部屋で悪魔と天使がポテチ食ってたので、そのまま一緒に世界救うことにしました〜
影ノ者
第1話 意味のないことをしても意味はない
「うぅん……」
僕が反射的に目を擦るのと同時に、小さな窓ガラスから差し込まれた恒星の眩しすぎる光が僕を深い眠りから解き放った。
毎度毎度この光は僕を深い眠りから強制的に目覚めさせてくる。そう、とても『不快』である。
とても寝起き一発目に思いつたとは思えないほどの凄まじく天才的な駄洒落をかました僕は、薄っすらと重い瞼を開いて知りすぎる天井を見つめた。
息をしていないようなまん丸LED電球一つと…… 隣に人一人が通れそうな穴が空いている。
綺麗にくり抜かれた天井からは、無限に広がる青い空と自由に流れる白い雲と小さな雀が顔を覗かせてこちらを見つめていた。
この穴は僕が三年ほど前にペットボトルロケットを発射させたときに開いてしまった不慮の事故穴だ。
もはやペットボトルという概念から逸脱したペットボトルロケットの威力を目の当たりにして、当時の僕はこの兵器を使って国一つ堕とせるんじゃないかという錯覚にさえ陥ったものだよ。
まあ、それは置いといてとしてもだ、気付かぬ間に随分と大きくなったものだな。
当時は天井に僅かなヒビが入っているぐらいだったのに、いつの間にか家から空が眺められるほどの大きな穴が空いている。
こんな大きな穴が空いていたら僕が気づかないはずがないのだけれども、まあ天井君も我慢の限界だったんだろう。
一夜にして穴が開くことだって無くは無いさ。
だってこの世界は未知と希望に溢れているんだからーーというのは流石の流石に言い過ぎだけれども、事実、想定外の事が起きるのは珍しくもない。
三年前のツケが今日に巡って来たんだろう。
それにこれだったら、ベットの上で寝ながら夜空に輝く無数の星達を眺められるじゃないか。
リアルプラネタリウム、今ここに爆誕!
「ふぅ。親にバレないように後で修理しとこ」
目覚めてから時間が経過した僕の意識は完全に起きていた。
しばらく動かしていない体を動きやすくするために、両手を頭の上にビシッと伸ばして体をほぐす。
そしてその状態のまま上下に体を揺らしながらリズムをつけて、ここだ!というタイミングでベットから飛び上がった。
勢いよく起き上がった僕の体はその威力に逆らえぬまま空中に浮く。
恐らく普通の人間がこの状態になったら、パニックになって宙で手足をバタバタさせながらもがいてしまうだろう。
しかしそれでは余計に体のバランスを崩しかね、気づいたときには床に体を強打し、激しい痛みと共に体があり得ない角度をつけて捻ってしまう。
ーーだが僕は違う。
僕は普通の人間とは一線を画した、鍛え抜かれた精鋭なのだ。
僕は浮いた体で勢いに任せるがまま前屈みの姿勢になる。頭部を内側に引っ込めて、綺麗に閉じた両足を天高く上げた。
それでそのまま内側に一回転して……、
「トウッ!」
両手を横に広げながら僕はベットの上に聳え立った。
一センチのズレもない水平な両手の角度、僅かな曲がりすら許さない直角に伸びきった両脚。
よく体操選手が鉄棒で回りきった後に、マットの上に回転しながら着地して決めポーズを決めるだろう? 鍛え抜かれたプロの体操選手ですらミスることがあるというのに、なんと僕はそれを難なく決めてしまったのだ。
まさに天才の所業。
これほどの着地はそうそう出来るものではない。
もしもこの僕が体操日本代表に選ばれた暁には、黄金に輝くメダルを我が母国に捧げようではないか。
「
その余りにも完璧な着地に、思わず僕は感嘆を漏らしてしまった。
その快感はいざ知れず、着地と同時にあそこも漏らしそうになるほど気持ち良かったのである。
僕が瞳を閉じながら余韻に浸り続けていると、何やら下の方からミシミシと音が聞こえてきた。
恐らく僕の着地の素晴らしさに、ベットが歓声をあげているのだろう。
喋ることの出来ないベットにすら歓声をあげさせてしまうなんて、僕はなんという罪な男なのだろうか。
まさに世界の理すら超越してしまう人物、ーーそう、
「いいぞ、もっとだ! もっと僕に歓声を送れ!!」
僕が叫び声を部屋中に轟かせた瞬間、爆音と共に僕の体はたちまち崩れて地面に落下した。
突然のことに多少の焦りは見せたものの、何が起きたのかはすぐに理解できた。
僕を支えていたベットが壊れてしまったのである。ベットが壊れてしまったから、必然的に僕は落下したのだ。
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