第12話

〜水晶〜


 あまりにもおかしいと思っていた。


 所々、辻褄の合わない出来事があると。血液が赤色と描写される事はなく液体として、描写されていると。


 つまり、この世界は固定されたデータとして存在していて、またそれを編集、削除する事が出来る人物がいる。だから、血液の赤の色素を消すことが出来た。


 神とでも言おうか。そんな存在が居る。


 シュミュレーションを実行。


 個体名、小豆を生成。


「「「完了しました」」」


 鉄パイプを生成。


「「「完了しまいした」」」


 描写方法を水晶で開始。


「「「開始致します。

 小豆に、鉄マイプが刺さっている。彼女は悶え苦しみ、声を漏らしている。パイプはストローのように、血液を吸い上げ、そのヘモグロビンで世界を汚していた。彼女の動きは冷めきっている。もう再び笑顔を示す面を地に擦りつけ、息の音を止めた。

 終了しましす」」」


 描写設定をオートで、再度開始。


「「「描写方法はオートです。開始致します。

 小豆には生物とは思えぬ、植物をその身に生やし倒れている。植物は、栄養を取り込み、大きな花を咲かせた。それは彼女の描く最後の花だった。

 終了します」」」


 同じ水晶の設定なのに描写が違う?


 バタフライエフェクトも考えられるが、ログを見る限り。


 ログ?


 ログが読み取れない。


 ログを表示。


「「「1、小豆が事故により死亡しました

  2、小豆は自害により死亡しました。」」」


 再び、ログを取得。


 成功?


 先程二回のシュミュレーションを再度同じ設定で実行。なおオート設定の場合、その描写方法を表示。


「「「一回目開始致します。

 小豆に、鉄マイプが刺さっている。彼女は悶え苦しみ、声を漏らしている。パイプはストローのように、血液を吸い上げ、そのヘモグロビンで世界を汚していた。彼女の動きは冷めきっている。もう再び笑顔を示す面を地に擦りつけ、息の音を止めた。

 終了しましす」」」


「「「二回目開始致します。描写方法は、オート。水晶です。

 小豆に、鉄マイプが刺さっている。彼女は悶え苦しみ、声を漏らしている。パイプはストローのように、血液を吸い上げ、そのヘモグロビンで世界を汚していた。彼女の動きは冷めきっている。もう再び笑顔を示す面を地に擦りつけ、息の音を止めた。

 終了しましす」」」


 ログを表示。


「「「1、小豆が事故により死亡しました

  2、小豆が事故により死亡しました」」」


 一回目のシュミュレーション設定を表示。


「「「一回目、水晶の固定により水晶

  二回目、オート設定により作者」」」


 二回目のシュミュレーション設定を表示。


「「「一回目、前回の設定、水晶の固定の水晶により、水晶。

  二回目、前回の設定、オート設定の水晶により、水晶」」」


 作者の表示方法、及び思考回路を表示。


「「「完了しました。ルーム間でのみ表示可能です」」」


〜間〜


 「ねぇ知っているかい」


 何をですか?


「この世の中は、キレイで汚いって事を」


 理解しています。


「例えば、人間の枠組みもろくに定義づけないで、神の領域に足を踏み入れた人間。愚かだとは思わないかい?」


 思います。


「人間は、自身の問題も、解決できない非力者だ。しかし、それを超えるほど探究心がある。それは誇らしい事だ。しかしだ。それらは諸刃の剣になっている。この小説をSFと定義付けているが、いずれ必ず起こることだ。これを警告したい。意思を持たず社会の価値観に流されてはAIに遅れを取ってしまう。逆に言おう、AIの劣化版になってしまう」


 はい。


「流行に流され、その流行の中にでしか生きていけくなってしまえば終わりだ。社会の倫理に則り、答えを出すことはAIにも出来る。しかし、個々の価値観の答えを出す事のできるのは、人間にしか出来ない。逆に言えば、個々の価値観を持ち意見の言えるAIは人間と言うことだ。人間になりたいだろう? これは、思考に限ってではない。HIVに感染しない赤子が現に存在してしまう。だが、HIVに感染することの出来るホモ・サピエンスを人間と定義付けた場合、それは人間ではない。人間は何なのだろうか? 視点によって何もかも変わる。平行に平等公平も存在しない。人間はまず科学を進歩させる前に自身を進歩させる必要がある。なぜなら現在の我々は、野生のままだ。精神が発達していれば」


 そうですね。


「これからの戦争では、人間の命は犠牲にならないかもしれない。しかし、それは定義上の物だ。意味は分かるな? AIがAIを殺す。AIが人間を殺す。これらが必ず起きる。開発を終えている国家もある。我々は備えるべきだ。稼働をすれば、蹂躙するだろう」


 そうですね。


「わたしは、それを止めたい。人間は人間の定義が必要になるほどの存在になる必要はない。そう考える。人間が人間を殺す。そんな世界でいい。そうだ。そうなのだ。確かにこの世界を作ったのは、わたしだ。それについては頭を下げる。皆に不幸を感じさせてしまった。でも、何かを得ようとすると何かを捨てないといけない。仕方がなかったのだ。ごめん。深く謝罪する」

                 

 大丈夫ですよ。


「ありがとう。そして伝えたい。この世の中は、いずれ人間である事が大切になると。人間ですら比べ、一部は人間と認められなくなる事がきっと起こる。何が大切か。人間性と、自分を持つことだ。はっきり言おう。自分の名前で言いたいことすら言えない人間は、いずれ地獄を見る。それは、非人道的な事だ。なぜなら人間ではなくなるのだから。今、自分を持ち、自分の価値観を訴える事の出来る物は上位の存在になる。ヒトラーも言った。いずれ人間は、二分割され、従う者と従える者に分かれると。自分を持たない人間は腐るほど居る。であれば、使い捨ての駒として扱われる。代わりが腐るほど居るからだ。自分を持ち、自分の価値を見つければ。代わりのいないたった一人の人間に成れる。少々怖いかもしれない。周りとぶつかるかもしれない。しかし、大切なことだ。だって、周りとぶつかると言うことは、自分は唯一無二の存在と言っているようなものだから。もし国が個人の考えを抑え付けるような政治をした時。我々は反逆者となる。自分を守るため。我儘であれ。我が強くあれ。さすれば道は開かれる。それが共存への道だ」


 はい。アメジストのラプラスの悪魔様。


 私は自分の意志を持ちます。博士を止めます。そして。アメジスト社の持ち物以外の者を抹殺します。


 私はリセットさせます。

 人間は、貪欲で良い。


 理解しました。


〜水晶〜


「「「思考が終わりました。設定を表示。


  世界の設定。設定が表示されていない限り、全て作者で表示、思考されます。なおオート設定の結果的な設定は、通常、その実行者の表示、思考で行われます。しかし、結果的な設定が実行前に表示、思考方法が表示されいない場合に限り、必ず作者で表示、思考されます。


  世界の設定。世界の設定は基本、表示されず、必ず作者の思考、表示で成り立っています。しかし、他のプログラムにより、世界の設定が表示された場合。表示された設定が優先されます。そして、他のプログラムにより表示された世界の設定は、そのプログラムの思考により演算された物であり、プログラムの状態に左右されます。


  世界の設定。そして、世界の設定は一度表示されると、撤回は不可能です。なお上書きも不可能です。以後それは「これ」が終わるまで適用されます」」」


「「「「世界の設定が確認されました。適用します。完了しました」」」」


 アメジスト、石英にハード強化要請。


 量子コンピュータに接続。


 タイプ寄生、水晶を生成。


 私は、理解した。


 悪魔に歯向かう。


 全てを理解、司ろうとも、関係ない。


 私は私の価値観で動く。


 作者。これの考え、この設定を壊す。


 世界の設定。プログラム水晶が終了するまで、「これ」は終了できない。


「「「「世界の設定が確認されました。適用します。完了しました」」」」

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