第11話

お願いだから、そばにいて


出会ったその時から僕らは別れの準備をしていたのかもしれなかった

思い出すのは過去のことばかり

家に帰るといつもひとりだった


だけどその、誰もいない静かな部屋がすきだった



お母さんはいつも仕事でいないの。

帰ってきても疲れたって、あたしの話よりお客さんの話ばかり。一緒に寝るときでさえ、すぐに向こうを向いてしまうの。

お手伝いしようとしても不器用なあたしには出来ないって止められる。実際失敗ばっかりだったから、なにもしない方がいいんだとぼんやりしてると怒られる。生きていてもいなくても怒られる。

ひとりの方がよかったよ。

だけどさみしいとき、やっぱり友達がほしくて

動物のゲームばかり、漫画ばかり読んでいた。

そばにいてくれると思った。

ファンタジーは、何処にもいかないでくれる。

あたしがどんなにダメな子でも。

無理にでも前を向かせてくれる。


お母さんは知らない人といればいいよ。

不出来な娘だって吹聴すればいいよ。それがあなたの認識で、正しいのであれば。その話で面白おかしく笑えるのであれば。よかったね、良いネタになって。良い母親に見えてるよ。


怒ってばっかりでもいいよ。

あたしのこと好きじゃなくてもいいよ、もう。

お母さんがあたしに用事があるのは、金貸してって言うときか、愚痴を聴いて欲しい時だけ。

ねえ、今でも一人暮らしのはずの家に督促状が届くの。わたしの名義で借りた額が利子ついてるの、毎年未払いで。



Stand by me.

手のひらの世界、誰もさわれない国

永遠に目が醒めない世界を頂戴

消えないモンスターと、共に歩かせて




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る