第3話

何も自分のことを話さない

騒音とは無縁の世界にいるような

透明のヴェールを纏った、不思議な人


雨のなかで傘を差して

乱れた髪をそのままにして

あなたはそこにいた


冷たい眼差しなのに

生きている温もりだけそこにあった

冷えていく、その手を取りたいけど


誰にも心を許さないような気高い面持ちで

一度だけ頭を降って

まっすぐに歩いていく

革靴の音がエントランスに響く


ひとりでも生きていけそうなあなたは

何もなかったように進んでいけるの


「実はパスタ茹ですぎちゃったんだよ」

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