第213話 将来有望?


「メイゴスさんは、どうやら、案内役がついていれば迷わないようなんです!」


「ほ、本当ですか!?メイゴスが迷わないなんて、そんな奇跡が・・・・?」


「はい!先程、私が地図でナビゲートしている間は迷いませんでした!」


「本当に・・・・メイゴスが・・・・・・・」



アリアさんは驚きすぎて言葉も出ない様子だ。


そうそう、この反応を期待していたのだ。


アリアさんが落ち着くのを待ってから、メイゴスさんを案内する上での注意事項を伝えていく。


そのいち、メイゴスさんに左右を使った指示をしてはならない。


そのに、メイゴスさんの案内中に一秒たりとも気を抜いてはならない。


アリアさんは今まで見た中で最も真剣な表情で話を聞いていた。



「・・・と、まぁ、今回分かったのはこんな所です」


通常、一人一船で運行する客船に船守と案内役の二人を乗せなければならないこの案は、費用の面で難しい気もする。


しかし、私には他の案は思い浮かばないので現在分かっていることを中間報告した。


一応、メイゴスさんが迷わないように運河に印を付けることも思いつきはしたが、案内役を付けるよりも実現性が乏しいので黙っておく。


あの運河にはメイゴスさん以外の迷子の達人のためにも対策が必要だと思うけれど、きっと客船ギルドの範疇を超えている。


世の中、左右盲や方向音痴の人に厳しい。


メイゴスさんで思い出したのだけれど、この間、英語の問題で「北を正面向いた時の西は?」みたいな問題があってね。


左右盲じゃなくても迷ったよ。


世の中、もっと左右盲や方向音痴に優しくあるべきだと思います。


メイゴスさんのような人が迷わないようにあの運河には対策が必要だと思います。



「いいえ。いいえ!ありがとうございます!想像以上の収穫です!」


「でも・・・・」


「問題ありません!・・・案内役については私に心当たりがあります」



アリアさんは過剰なまでに感謝の意を伝え、私に依頼達成後の手続きについて説明してくれた。


今回のこの依頼は、冒険者ギルドでも個人への指名依頼として受注されている。


依頼の達成期限や失敗による罰はない。依頼を遂行する上で必要なものとして客船の割引証明書(リボン)が受領されている。


そして、依頼達成後にはメイゴスさんから達成証明の証を受け取って、冒険者ギルドへ持って来たら良いらしい。



「登録後、こんなに早く、指名依頼を、それも達成不可能と見られた依頼を達成できるだなんて・・・ルイーゼさんは将来有望ですよ。ギルド長の覚えもめでたくなるかもしれません」


「大袈裟ですよ」



この依頼がギルド長の目に留まるほどの大快挙とは思えない。


アリアさんなりのお世辞だろうと軽く流しておく。


それにしても、メイゴスさんの迷子癖改善法が見つかったかもしれないというだけで、ここまで喜ぶとは二人は単なる知人よりも親しい関係?



「・・・あの・・アリアさんとメイゴスさんって・・・・・・」



私の質問にアリアさんは唇に人差し指を当て微笑んだ。


その顔は、普段の可憐な少女めいた雰囲気から遠く離れた、大人の女性の顔だった。



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