第158話 必〇仕事人
「お待たせしました」
待っていてくれたおもちゃさんたちへお礼を言いつつ駆け寄る。
おもちゃさんは微妙な表情でこちらを見た後に「気にするな」と言って元の配置に戻っていった。
前方を行くリーダーさんにも再度謝る。リーダーさんもバロンの暴走をたいして気にしていないようだった。
「良いよ!良いよ!結果的に遠回りせずに済んではやく進めるし・・・・ところでルイーゼちゃんは夜目効く?灯りつけなくても歩けそう?」
リーダーさんの言葉に周囲を見渡して視界を確認する。お日様は姿を隠してしまったが、その残光はまだまだ残っており、暗くなってはいない。
また、太陽の残り香がなくなったとしても月の光があるので歩行困難になるほどの暗さとなることはないと思われる。
「歩くことは可能です・・・でも、隠れたモンスターには気づけないと思います」
この世界の月はずいぶんと大きく、また、明るい。遠くまでは見通せないけれど、近くの人やものを見られるだけの視野は確保できるだろう。
ただ、はっきりと姿を視認できるわけではないので、木々の影からモンスターが飛び出して来たとしても迅速な対応はできそうにない。
「索敵は盗賊二人が頑張るからいいよ。ここは木が多くて、もともと視界で発見できる敵って少ないし」
このフィールドは林道という名の通り、左右に杉の木が生い茂り視界を遮っている。
木と木の間隔は疎らに空いており、林の中を通り抜けることも可能だ。
私たちの歩いている道は舗装された道とは異なる所謂獣道と言うもので、踏み固められた地面が曲がりくねりながらも続いている。
時折、折れた木の枝が道を塞いでおり、道の脇には背の高い蒲公英も映えている。
小動物が隠れられそうな物影が多く、モンスターにとっては奇襲のかけやすい地形だ。これでは視野に頼って敵を発見するのは難しいだろう。
「特にお父さんは豹らしく、夜の索敵に強いから大船に乗ったつもりで安心してよ」
豹は夜行性の動物で夜目も効く。暗闇の中での索敵なども得意分野だろう。
同じく夜行性の猫科動物なお2さんも夜目は効くだろうし、狼なリーダーさんも問題ないだろう。
サルミアッキさんは漆黒の名を持つプライドとして夜間行動も可能にしていそうだし、ウォトカさんも夜に強そうだ。
残るメンバーも言及がないということは夜間行動に不自由しないと言うことだろう。
私たち、猫と兎パーティも夜目の効く種族なので問題ない。リーダーさんも猫が夜目の効く動物だと知っていそうなので、先程の夜目云々の質問は念のための確認だったのだろう。
「よし!出発するよ~!」
リーダーさんの号令に合わせて再出発する。腕の中にはバロンが暴れられずに退屈そうな顔で納まっている。
それにしても、蒼然たる世界の中で、お父さんの真っ白な毛並みはよく目立つ。
お父さんは服まで白いので余計に。先頭を歩くお父さんの白さはちょうど良い目印となっている。
それに対して、少し前を歩く漆黒のサルミアッキさんは全身真っ黒なので暗くなればなるほど保護色となって見えにくくなっている。
この魔術師、暗闇に乗じて敵の暗殺でもしそうな見づらさである。闇魔術などは習得していないそうだが、もし持っていたら仕事人の仲間になっていたかもしれない。
こう、相手に気づかれないように闇魔法できゅっと一仕事しそうだ。でも、月がある以上、完全な暗闇は訪れないので敵から姿を隠すことも不可能だろうか。
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