第138話 なにそれ痒い
「あれなんて書いてあるんだろう?」
文章のように列をなして刻まれていることから文字だと判断したけれど、改めて観察してみると、絵の羅列のようにも見える。
これは漢字?でも漢字なら一つも解読できないなんてことは起こらないはずだ。
ならば、漢字以外の象形文字だろうか。ローマ字やキリル文字、デーヴァナーガリーにだって元となった象形文字があった気がする。
そのどれかがこの謎の文字らしきものなのかもしれない。
「あー、あれ。検証班に伝えてみたけど、今は忙しいって断られたんだよなぁ」
検証班は、ゲーム内で実験などを繰り返し、データを収集してゲームの攻略やプレイに有用な検証を行う者たちの総称だ。
一定時間同一フィールドで戦闘を繰り返し、各フィールドのモンスターの出現率を調べたり、
同じモンスターを様々な条件で倒し、各モンスターのドロップアイテムを検証したりしているようだ。
とは言うものの、私は掲示板などをあまり利用しないため、検証班についても詳しくない。イディ夢の検証班がやっていることも良く知らない。
「専門家に頼れないなら私たちにはどうしようもないね」
「それな~」
検証班は検証することに人生をかけているような専門家集団というイメージがあるため、
そんな専門家が忙しいとはいえさじを投げた問題にど素人が手を出したところで碌な結果が得られるわけもないだろう。
謎の文字をゲームの外に写して持ち出す手段がないし、覚えるとかできる気がしないし、
覚えたとしても一致する文字を見つけられなさそうだし、というか正確に覚えるとか無理だし。
さて、いつまでも村の外観に見とれて、村の外で待機するのも危ない。
村の中に入らなければ安全地帯に入ったことにならず、モンスターの襲撃を受けてしまう。
ほら、そう言っている間にも近くでモンスターが発生した。接敵される前に避難しないと。
「!?ヤバい!ルイーゼ!早く村に逃げ込むぞっ!!」
出現したモンスターに気が付いたおもちゃさんが緊迫した様子で叫ぶ。そんなに危険なモンスターなのだろうかと、視線を向けてすぐさま後悔した。
「なん、何あれ・・・・?」
どでかい虫が三匹、ものすごく不愉快な音を立てて飛んでいる。まだ春だと言うのになんて気の早い奴らだ。
真夏の夜に睡眠妨害を繰り返す、あの音が耳にこびりついてきてひどく嫌な気持ちになる。
「ズィッヒェルヴィーゼルだ!」
ズィ・・・何?また、ここの運営はやたらと長い名前をっ。
「でっかい蚊の三連星だ!三匹目は謎の薬を塗ってくるぞ!」
「なにそれ痒い!なんの嫌がらせ!?」
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