第102話 起き抜けに崖っぷち

掲示板まとめ


・西のボス狼はクトゥルフ式ではなく北欧式ワンコ

・ヘビコパスさんの愛しの君発見

・北方日本探索部隊「猫と一緒に野球観戦へ行くぞ!」

・イヌの人のポチは犬じゃない

・キャラクターを作り直すとナビさんの好感度システムに影響あり








気が付けばすっかり春めいて暖かな日が続くようになった今日この頃。


しかし、今日は朝から花冷えの気配がひしひしと建物の隙間から入り込んできているようだ。


起き抜けの少し高くなった体温を外気が緩やかに冷ましていく。それと共にぼんやりとした頭が少しだけ思考力を取り戻した。



お早うございます。はい、朝です。


小窓から差し込む日差しが憎らしいほど清々しい朝です。


せめて私の気分に寄り添う花曇りだったなら心穏やかに起きられたかもしれないのに、お日様が隠れる気一切ない快晴ですね。


寝不足の目に優しくない。



「おはよう。バロン、アイギス」



寝台の上には黒白大小の毛玉が端っこに離れて丸まっている。


とりあえず近くにあった白い毛玉を撫でたことで気分が少し上昇した。


お尻?背中?が山を描くように丸くなり、顔を地面に押し付けるようにして眠るアイギスの寝姿に癒されながらも寝台から降りる。


寝癖を手櫛で整えながら横目で確認した寝顔はくりくりのおめめが完開きだった。



「・・・・・・」



初めてアイギスの寝顔を見た時には驚きすぎて思わず二度見したが、兎は目を開けたまま寝る生き物らしい。


吃驚して起きてないことを確認した後、現実でも調べたからもう慌てない。


野生の兎は基本的に外敵からの強襲を恐れて目を開けたまま寝るらしい。


飼育下にある兎の場合、目を瞑りリラックスした姿勢で眠ることもあるらしいが、同じ寝台の上に天敵バロンがいる状態では安心などできないだろう。


というか、今更気が付いたがバロンとアイギスを同じ場所で寝させても良いのだろうか。


しかし、どちらかを別の場所に移動させる方法も両者を隔離する手段も思いつかないので、今はとりあえず自分が壁となることにしよう。



アイギスとは反対側の寝台の端へと視線を遣れば、バロンがそこで丸くなって寝ている。


ぶっとい尻尾を抱き込むようにして眠る姿は正気を失いそうなほど可愛い。


私の覚醒に気が付くと片目を開けてこちらの様子を窺った後、尻尾の先を小さくゆっくりと揺らす。


立ち上がって朝のひとモフを堪能しようと伸ばした手に自分から頭を摺り寄せてくる仕草の破壊力に内面で悶えのたうち回りながらも、


鼻先からおでこまでを往復するように撫でてから喉元をかしかしと掻いてやる。


バロンは気持ちよさそうに目を細めて女王様のように顎をそらして私を見おろしてくる。


猫のこの気位の高そうな表情が好きだ。よきにはからえみたいな顔して好きに撫でさせてくれるところも好き。



撫でられるのに飽きたバロンが身体を起し、その場で大きく伸びをする。


背中からお尻にかけてのラインが大変すばらしいなと眺める視界の端で、アイギスが跳び起きる。


いや、本当に、言葉通り空中に跳ね上がって、寝台から落ちかけて、寝台の端にぶら下がりながらジタバタしている。


アイギス、落ち着いて。



起き抜けに崖っぷちなアイギスを下から掬い上げて、寝台の隣に置いておいた装備を装着してから頭上に乗せる。


安地にたどり着いたアイギスが力尽きたように頭上で潰れた気配がする。うん、いつもより、ちょっと重いな。



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