第24話 黄衣の救世主


「夜のモンスターって…お化けじゃないよね?」


夜のフィールドで幽霊にあったらどうしよう。バロンとウサギもいるし、大丈夫だろうか。



「ルイーゼさん?」


声に振り返れば黄色の衣。今はなぜだか黄金色に輝いて見える。



「クロウさん!!」


泣きそうな顔の私を見て不思議そうな様子である。


「どうしたのですか?」


「宿が・・・宿がないんですっ」


「宿が?」


「このままでは夜のフィールドでお化けとパーティしなければならなくなります!」


お化けとこんにちは、踊りましょう、なんて嫌すぎる。バロンがいても怖い。そもそもお化けって倒せるの。



「落ち着いてください。夜の都外にお化けなんて出ません。昼と異なるモンスターは確認されていますが・・・」


「っそれって、ゆうれい・・・っ」


お皿を一枚二枚数える女の人とかうらめしや~って話しかけてくる女の人が出てくるのでは。


真っ黒な細長い男の人とか排水溝に潜んだ不気味な道化師の可能性もある。


想像上の幽霊に怯えて真っ青になる私。怪談は、怪談はダメなの。本当に。



「いいえ、違います。確か…石とか、犬?だったような……」


石とワンちゃん?幽霊は出ない?火の玉が飛んでたりもしないの?



クロウさんの言葉を聞いて少し冷静になった。ホラーな展開には会わなさそうだ。良かった。



「宿がないのですか?」


「はい・・・」


「そう…ですか……」


何か考える様子のクロウさん。妙案があるのだろうか。



お化けがいないのならば夜のフィールドに出ても良いけれど、その間に宿に空きが出るかは分からない。なんとか宿を見つけたいところ。


「ルイーゼさんは、街の外に風車小屋があるのを知っていますか?」


「?はい。東の草原で見ました」


鬱金香チューリプが揺れる草原で香水瓶に似た形の風車が回っていたのを覚えている。



「あの小屋は夜に街へ入れなかった人のために解放されています。通常は、街の住民のみですが、住民から許可を得た外の者も使用可能です」


「そうなんですか!?」


「はい、よければ宿の代わりに使ってください。ギルド証が鍵の代わりになりますよ」


救いの神!いや、クロウさんは神父様なので救いの聖者…救世主様だ!



「ありがとうございます!!」


ご厚意に甘えて、今日は東の草原の風車小屋に泊まらせてもらおう。


宿が開くまでモンスターと鬼ごっこしたり、街角で野宿同然でログアウトしたりしなくて済みそうだ。



風車小屋の中にはベッドなどの家具一式もあるため、身一つで泊まれるそうだ。


保存食も置いてあるが、それには触れないでほしいとのこと。


先程、冒険者ギルド横の武器防具屋さんで食料や冒険に使いそうなものを揃えてあるため問題ない。


食事は自前で準備してある。



東の草原で休むのならば、明日はそのまま東に進んでみようかな。


装備も整えたことだし、食料も確保してある。


今日の様子を鑑みるに戦力的には、もっと先のフィールドにも挑戦できそうだ。


行けるところまで行ってみて、可能なら東の大国、龍の国だっけに入国することを目標にしてみようかな。



しかし、途中に村などはあるだろうか。


ない場合には外でログアウトするための道具などが必要になる可能性もある。


野宿のために用意すべきものは何だろう。実際にしたことなどないため不明なことが多い。


そのあたりのことも、クロウさんなら知っているだろうか。



「あの、明日は東に進んでみようと思っているんですが、道の途中に泊まれそうな場所はありますか?」


「ああ、随所に村がありますよ。どの村も頼めば泊めてくれるでしょう。なので野宿の用意などは必要ありません。ただ、食料は持って行った方が良いです」


食料は必要と、心のメモに記しておく。



村の食糧事情に配慮して村の負担にならないように自分たちで用意した方が良いということだろうか。


考えている内に、クロウさんの言葉が続く。


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