第13話 毛皮付きの非常食
前回のあらすじ
・ウサギによるルイーゼへの攻撃
・バロンの反撃
・ウサギたちはもふもふを散らした
・バロンの本能が刺激されている
・バロンはウサギをおもちゃにした
・ウサギはルイーゼに助けを求めている
《ウサギを助けますか? ▼はい ▼いいえ》
「っ――バロン!まって!」
バロンの目がこちらに向いた。遊びの邪魔をされて少し不服そう。
「その子、そのウサギっ・・・・仲間にしよう!」
呆れた眼差し。ウサギを仲間にする必要性が分からないって顔。
「っほ、ほら、すごいもふもふだし、防寒具代わりに・・・・・」
…バロンがいるから防寒具はいらないな。
「せ、戦力・・・・・・・」
なるわけがない。
「っそう、非常食!非常食に連れて行こう」
兎は古くから食用として親しまれてきたはず。
毛皮付きの非常食。これならバロンも納得してくれるはず。
なんかウサギが神は死んだみたいな顔でこちらを見ているけれど、大丈夫。バロンの説得はもうすぐ成功する。
『非常食ならこの場で殺せばよかろう』
うん、まぁ、そうだよね。アイテムポーチに入れれば中のお肉も腐らない。
アイテムポーチは全探索者に配られる初期装備で、入れられるアイテム数に限りはあれど中に入れたものの時間を止める機能を持つ。
「アイテムポーチには許容量もあるし・・・・・・」
横目で確認したウサギはまな板の上にでもいるみたいに、もうどうにでもなれって姿勢で固まっている。諦めたらそこで終わりだよ、ウサギさん。
「非常食兼ペット・・・ねぇ、バロン良いでしょ。ペットが一羽くらいいたって・・・・」
ほら、立って、ウサギさん。諦めないで。諦めないでよ、ウサギ。どうしてそこでやめるんだ。
もう少し頑張ってみろよ。ダメダメダメ。諦めたら。さぁ、立つんだ、ウサギ。今こそバロンにアピールする時。
バロンに認められることだけが君が生き残るチャンスなんだ。
私の熱いエールに突き動かされて虫の息だったウサギがよろよろと立ち上がる。
『・・・・・まぁ、根性だけはあるようじゃの』
バロンはため息をついて、ウサギから視線をそらした。
「ありがとう!バロン!」
バロンの許しを得て、ウサギが仲間になった!
頭の中でファンファーレを打ち鳴らしながらウサギに駆けよる。
瀕死のウサギを回復しなければならない。
応急手当を使う。スキルの使い方はキャラクリの時にナビさんが教えてくれた。
口頭での説明でスキルの効果も秘密にされたけれど、応急手当なら回復系のスキルのはずだ。
応急手当により見た目では傷がふさがった。ステータスを確認すれば、HPが僅かではあるものの回復している。
ウサギを抱き上げて門へ戻る。バロンが私の肩に軽やかに飛び乗ってきた。
安心したら、お腹がすいてきたな。
SPバーも減っている。
このゲーム、スタミナが搭載されており、時間が経つ毎にスタミナポイントSPが減っていく。
また、激しく動いたり、魔法を沢山使ったりするとSPも早く減る。
まあ、だいたい一日三食、よく動く人はおやつも必要なくらいで、現実世界と変わらない食事量で良い。
SPが減り零になると動きが鈍くなり、さらにそこからSPがマイナスに突入し行動を阻害していく。
最後にはまともに動けなくなり、死亡する。SPマイナス状態を飢餓、死亡した場合を餓死と呼ぶらしい。
ナビさんは一度体験してみるのも楽しいって言っていたけど、私は嫌。
まだSPが零になるような数値ではないけれど、早めに何か食べたい。
「お腹すいたなぁ・・・・」
「にゃー・・・・」
バロンも同意みたいだ。確認すればバロンのSPも私と同じ状態。
確か広場の露店で食べ物も売っていたはず。
露店なら買ってすぐに食べられるだろうし、場所もわかりやすい。
露店に行こう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます