第7話 冒険者ギルドᚹ


不思議に思いながらもギルドの門を潜ると遥かに高い天井が波打つ広いホールが現れた。


奥の方には木製の受付カウンターがあり、その上には大きな馬のひづめのような形の窓が見える。


窓の向こうはカーテンで遮られており窺い知れない。



ひろーい。おおきーい。


感動に立ち止まり震える私の腕をバロンがなめる。



「にゃー」


ごめんなさい。こんなところで固まっていたら後から入る人の邪魔になるよね。



歩を進めたことで、受付カウンターに座る三人の女性が目に入った。みんなそれぞれ違った美人さんたちである。大・中・小だな。



とりあえず真ん中の受け付けに並ぶ。真ん中は小柄な清楚系美女である。


ちらりと横目で隣を確認する。お色気お姉さん。凄く大きい。私もあれくらい・・・


いや、私は別に小さくない。普通くらいだし。


なんか心に傷を負った気がするからバロンに頬を寄せて癒されよう。もふもふはすべてに勝る。きっと、そう。



右隣のお姉さんは背が高く、女性にもモテそうなスレンダーな美女である。凛々しい雰囲気で頼りがいがありそう。


右側のカウンターの手前には丸テーブルがいくつか並べられており、何人かがその周りを立って囲んでいる。その手にはジョッキ。黄色いし麦酒だろうか。


ここからでは、半楕円形の扉が見えるだけでわからないが、表の看板から言って右側に酒場がありそうだ。



「次の方~」


人がそう多くないため順番が来るのも早い。


真ん中のお姉さんは私と同じくらいだから親近感が湧く。



「こんにちは」


「こ、こんにちは」


でも、やっぱり、緊張する。笑顔で挨拶してくれたお姉さんに少し引き攣った笑顔で返す。


見かねたバロンが肉球で頬を揉みほぐしてくれた。バロン尊い。ありがとう。



「本日は登録ですか?依頼ですか?」


「登録です」


「では、登録用紙の記入をお願いします」


目の前に紙とペン。名前、職業、得意なことなど簡易な記入欄が並ぶ。


名前はルイーゼ。職業は見習い。何見習いかは、まだ分岐していない。



イディ夢では、所有スキルによって選択できる職業が決まる。スキルがない初めは無印の「見習い」。


そこからスキルを増やすと職業の候補が現れ、プレイヤーはいくつかの候補の中から職業を選ぶ。


私が持っているスキルはテイム、識別、応急手当、水魔法の四つ。候補は出ているけれど、まだ選択していないため「見習い」のままだ。



「その子は従魔ですか?」


用紙と格闘しているとお姉さんから声がかかる。視線の先はバロンである。



「はい。私の心強い相棒です」


「素敵な相棒さんですね」


「ありがとうございます」


バロンの素晴らしさが分かるなんてお姉さんは相当な遣り手だ。



「混乱防止のため、冒険者ギルドでは従魔の登録も行っております。用紙の下方、こちらにその子の名前をお願いします」


記入中の用紙の下の方、従魔と記された欄がある。


なるほど、ここに記入するのか。



「その子の場合は問題ないとも思いますが、従魔を見た住民が街中に魔物が出たと誤解されることがあります。


そういった時の証明書としてギルド証を使用できるのでご留意下さい」


たしかに街中で突然、大きな魔物とかが現れたら騒ぎになりそうだ。見た目だけで判断できない場合は特に。



「また、街中で従魔が問題を起こした場合、その主が責任を負うのでお気をつけ下さい」


「はい」


まぁ、従魔の行動は主の責任、当然である。甘やかすだけ甘やかして、人を噛んだら従魔が悪いとか言い出す主とかいたら駄目だろう。


バロンは賢いし問題なさそうだけど。



「書けました」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る