俺にラブコメディは訪れない
永川ひと
ラブコメディは訪れない
第1話
今年に初めて訪れた季節。
桜色の花びらが舞い、風に乗って、どこまでも飛んでいく姿を見上げて、胸の中にうずうずと期待と希望を持っていた。
何もかもが新鮮で、真新しいものばかりで、この学校なら俺にも何かが起きるかもしれないと思っていた。
ドラマの主人公のように。漫画の主人公のように。ラノベの主人公のように。
何かしらドラマチックな物語がここから始まるのではないかと勘違いしてしまいそうだった。
心が躍り、胸の内から湧き上がる高揚感に口元が緩んだのを覚えている。
最低限、何もなかった俺の人生に何かしらの物語が始まり、少しだけ色づいてくるものだと思っていた。
ちょっとずつ。ちょっとずつ。
自分の人生を変えてくれるような出来事が起きて、ちょっとずつ色づいていく。
そんな期待を胸にして、周りの景色は鮮やかに煌めいて見えた。
輝いて見えたあの日は、いつまでも続く。
そんな事を考えて、入学から数ヶ月が経った。
……親友を見て思う。
俺にラブコメディは訪れない。
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