第14話「剣聖の娘」

「リリアーナ様のお加減はいかがですか?」


 ……うん。大丈夫そう!


「ほっ、よかった。

 ならすぐに目を覚まされるんですね?」


 いいえ、もう少し休みたいみたいね。


 リリアーナはとっても頑張ったから、とっても疲れちゃったみたい。


 あと、何かイタズラでもしたのだと思うわ。


 誰かに怒られるのを怖がってるみたいに感じるの。


 起きたら一緒に謝りに行ってあげなくちゃ。


「もしかしてリリアーナ様、ルーフェウスのこと……。

 彼は裁かれるべきだった。

 貴女のしたことを責める人なんて誰も――」


「こらっ! リリアーナはどこじゃ!!」


 あら、可愛い女の子。


 でも、窓から入ってくるなんてリリアーナみたい!


 そうだ、さっきメイドさんに作ってもらったキャンディあげるわね。


 ほらほら口あけて、あーん……ぽいっ。


「なんじゃお主は? (ころころ)

 いや、先に名乗らせてもらおう。

 わしの名はローズリー・カ……おお、この「きゃんでい」おいしいのぅ」


「もったいないお言葉です」


 うふふ、美味しいならもうひとつあげるわ。特別ね?


「おお、優しい子じゃな。

 わしのバカ娘にも見習わせたいのぅ……そうじゃ!

 いったい、リリアーナはどこにいるんじゃ!

 隠れても無駄じゃぞ、気配でこの部屋にいることは分かっておるのじゃ!」


 リリアーナを探しているの?


 ならそこにいるわよ……ほら、このベッドで寝ている人がリリアーナよ。


「そこにいたのか!

 こらっ、わしの剣技を勝手に使っ……誰じゃこれ?」


 私のお友達のリリアーナよ。


「ほぅ、「男子三日会わざれば刮目してみよ」とはよくいうが……

 女子であっても同じことが言えるのじゃな。

 いつの間にかわしよりも大きくなりおって……ほろり」


 可愛い女の子がお目眼をウルウルさせながら、リリアーナのお胸をたぷたぷと揺らしてる。


 ……きっと甘えたいのね?


 ほら、こっちにも私のお胸が……あ、クリスティーナも来て! 


 リリアーナのだけじゃなくて、こっちも、そっちも触ってみていいのよ?


「ひゃ、ユーリ様! 

 私の胸を自分の「モノ」みたいに扱わないでくださっ……あら?

 な、なんだか悪くない気持ちですわ……むしろなんだか嬉しいような」


「仲いいのぅおぬしら。

 ありがたい申し出じゃが、もう乳離れはすませておるのじゃ。

 それよりもこのバカ娘にいったい何があったのか教えてもらえんかのぅ?」


 あ、お胸よりお話が好きなのね?


 じゃあ……はい、こっちにおいで。


 クリスティーナのお部屋に小さめの椅子もあってよかったわ。


「ゆ、ユーリ様!?

 剣聖様にそのような態度をとられては……」


「よいよい。

 おお、なかなかの座り心地じゃ」


 もう一つ椅子があるのに私のお膝の上に座ってる……かわいいっ!


 あ、でもその位置だとお胸が邪魔になるかしら……よいしょ、これで大丈夫ね。


 えっと、リリアーナのお話は……そうね、あれは私が森で狩人をしていた時に――





――


 お話が終わると女の子が立ち上がってリリアーナのもとに歩いていく。


 ちょっとだけ寂しいかも。


 ねえねえ、わたし他にもいろんなお話を知ってるのよ?


「ほぅ、ではそれは次の楽しみにとっておこう。

 しかし、そうか……わしのしたことは間違っておったか」


 あ、今度はあなたがお話してくれるのね?


 聞かせて聞かせてっ!


 ……。


 リリアーナはこの女の子「ローズちゃん」の義理の娘みたい。


 義理の娘ということは、リリアーナのお父さんと結婚したってことよね。


 でも、ローズちゃんはまだ小さいから結婚は無理……あ、きっとお姉さんの娘を自分の娘として可愛がってるんだわ!


 なんて可愛いのっ!!!


 そして、ローズちゃんが紹介した仕事をリリアーナが辞めたから心配していると、なぜかウキウキした様子で手紙が送られてきたのね。


 昨日届いた……あ、それなら私と出会ってすぐくらいに書いたのかもしれないわ!


 でも、リリアーナが「殺気」を出してるところなんて見たことないけれど。


「ああ、その辺はわかっておるから大丈夫じゃ。

 手紙には近いうちに会いに来ると書いてあったから待つつもりだったのじゃが、娘に持たせた「お守り」が使われたのを感じたから少し様子を見に来たというわけじゃ」


 リリアーナがお守りを持っているなんて知らなかったわ。


「ふむ。

 どうやらギルドで聞いた話と矛盾してないようじゃが……足りんな。

 では、今度はそちらのお嬢さんに…………いや、バカ娘が起きるのを待つほうがよいようじゃ」


 お嬢さんってクリスティーナのこと?


 たぶん私が知ってること以上のことは知らないと思うわ。


 だって私たちほとんど一緒に行動してたもの……ね、クリスティーナ?


「ユーリ様……。

 そ、そういえば冒険者ギルドの方から何かお話したいことがあるそうですわ。

 メアリー、案内をお願いしてもいいかしら?」


「かしこまりました。

 ではユーリ様、ご案内いたします」


 あ、もう少しお話したかったのに。


 また後でお話してね?


 じゃあ行きましょうかメアリー、……あ、お土産は何がいい?


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