第2話 プロローグ②

「おっけー!私に任せなさいな!!」






 気が付くと私は、知らない場所にいた。


 いっちに、さん、しっ、やった!身体は軽いままだ!


 やっと□□と△△に会える!!


 ……?


 □□って誰?


 △△に会って何するの?


 ?


「はいはい、こっちよ! あなたの願いはもう聞いたわ! □□と△△からね!」


 また□□と△△だ。


 ていうか私の願いは私に聞いてほしいのだけど。


 えっと確か□□に会いたい……じゃなくて、△△……でいいんだっけ?


「無理に思い出そうとすると身体に悪いわよ? じゃあ聞くけど、あなたの夢はなあに?」


 ……。


 …………。


 …………そうだっ!私は赤ちゃんが欲しいっ!


「はいはいわかったわ。じゃあそれにしましょう。」


 よかった。これで幸せになれる……はず。


「えーと、家いっぱいの赤ちゃんということは……3000人くらいね。じゃあ、外宇宙に生息するモケモケ星人があなたにぴったりね!」


 モケモケ……?


「体中から他の生物を催淫するフェロモンを出せるから相手に困らないし、数百年くらいなら何も口にしなくても生きていけるくらい生命力が強いから好きなだけ増殖できるわよ! □□と△△もこれにはにっこりまちがいなし!!」


 フェロ……数百年……?


「じゃあ、いってらっしゃいな……て痛たたたたぁぁぁぁああああああああ!!!!」


「ここ、これはやばいわね! すっごく怒ってる! 一生懸命考えたのにすっごい怒ってるのが伝わってくる!!」


 うずくまってどうしたんだろ、身体……痛いの?


「だってしょうがないじゃない!家っていったら小さくても赤ちゃんでいっぱいにするなら数百、いえ、数千人は必要よ!?」


 おうちに数千人の赤ちゃん……えへへ。


「笑ってるわ! 怖い! 世間知らずの女の子怖い! ……いーい? 女性が一生で産める赤ちゃんの数には限りがあるの! それに赤ちゃんってすぐに育つから1度に数千人産まないとだめなのよ!? そんなのお腹が破裂しちゃうわ!!」


 でも頑張れば……!!


「頑張ってもだーめ。そもそも赤ちゃんは産んで終わりじゃないの。そこから始まるの」


 ……始まる?


「そうよ。赤ちゃんにはお母さんが必要なの。それも付きっきりでね。だからあのお方は人の子の数を制限したの」


 ……じゃあ、お母さんも沢山必要ってこと?


「そういうことね」


 ……なるほど。


「うんうん」


 ……じゃあ、お母さんもお願いします!


「うん?」


 赤ちゃんにはお母さんが必要なことは分かりました。でも、それなら赤ちゃんの数だけお母さんがいれば問題は解決ですよね?じゃあ、私の願いはたくさんの赤ちゃんと沢山のお母さんです。


「近い近いっ! 急に早口でまくしたてないでよ! そんなことできるわけ……わけ……? …………できるかも?」


 じゃあそれでお願いします!


「え……ま、まあいいけど……ふふっ、本当にそれでいいのね? じゃあ、あなたの願いを叶えます!」


 わーい!


「□□と△△からの祈りボーナスを加算して……っと、願いを叶えるボタンは……あー……っと、これ! はい、でました!あなたの種族は人間、性別は女、年齢は精神年齢が少し実年齢よりも幼いから、精神年齢と同じくらいでちょうどいいでしょ。見た目も可愛いから大体同じで肉付きをよくしてっと、あとは……人を傷つける魔法と、癒す魔法、どっちがいい?」


 癒す魔法でお願いします!


「ま、そうでしょうね。じゃあ、こうしてっと、あとは赤ちゃん問題……これは男の人のアレをちょちょいっと、はい、付いたー!」


 え、付いた?何が??


「おっと、△△が怒ってるのを感じるわ! でも、□□は意味をまだ理解できてないみたいね……ふふふ、私をビビらせた仕返しよ!」


 ねえ、ちょっと……っ!?


「最後にこれをポチっとな! はいもう遅いですー! あなたたちの娘はおち〇ち〇娘よ! あーはっはっは!!」


 え、この周りの光は何!すっごい音でなに言ってるか聞こえない! 普通でいいの! 普通になってる!?


「あははは……ぐぇっ! ちょ、ちょっと待って!何で直接攻撃できるの!? △マの愛ってこんなに強いの!?」


 え、あの女の人って……△マ?


「ギブギブ!大丈夫よ! ちゃんと男の人と同じように機能するすぐれものだから! 大体あの様子だと本当に試そうとするわよ!? 一人で「赤ちゃん3000人チャレンジ」なんて考える子よ? 悪い男に捕まったら一生……ちょ、今度は何!?」


 じゃあ、あっちの男の人は……□パ?


「ちょ、ちょっと、どこ触ってんのよ!? 男の人の「アレ」がついてたら手を出される心配がないし、ほかの女の人に産んでもらえば一人で産むよりちょっとは現実的になるでしょ!? え、アレが付いてたら何で手を出されなくなるのかって…………え? ……あ、アンタもしかしてそっち系? あなたの妻子、引いてるけど……大丈夫?」


 あ、あはは。わ、私はそういうのもいいと思うよ?


「も、もう離して! あんたたちには参ったわ! 私の負け! 付けちゃったものは外せないけど、ちゃんと幸せになれそうなところを転生先に選んであげるからそれで納得しなさいな!」


 パパ、ママ、ありがとうね?


 もっと普通が良かったけど「特別」なのもきっと楽しいから……私、いくね!


「行ってきます!!」


 ふわり、とした温かさとともに少女の姿が光に消える。


「さてとっ、あんた達にはお仕置きを受けてもらわ。……何よ?まさか何も咎められないとでも思っていたの? 貴方達にとっては「夢」でも、私にとっては「違う」わ」


「罰として貴方達にはもう一人子供を育ててもらいます。年齢的にちょっと厳しいけど、不自然という程でもないから問題ないでしょ?」


「産む苦しみに変わりはないけど、生まれてきた子には私の加護をあげるからせいぜい幸せになるといいわ」


「それじゃ罰にならないって、知らないわよ。あなた達にとっては「違う」ことだとしても、私にとっては「罰」なのよ」


「ほら行った行った! 後がつっかえてんのよ! あ、アンタのそれ、半年は超・元気だからその間に励むように! さて、次はあっちね――」








 ゆらりゆらり、光の波に身を任せる。


 私の意識が光に溶けて、見たこともないくらい綺麗な「世界」につくまでの間。

 とっても幸せそうな家族の姿を見た。



「ただいまー!」


「ああ」


「お帰りなさい!手は洗った?」


「今からだよ、ねえお父さん!一緒に洗お?」


「ああ」


「あ、新しい剃刀買っておいたわよ」


「ああ」


「もう、あなたったら「ああ」ばっかりね」


「男はこういうもんだ」


「カッコいいと思う!」


「ほらな?」


「私だって知ってます!」


「手、ぴかぴかー!」



 おぼろげな記憶とは違って多くのしわが刻まれていたし、知らない女の子もいた。


 けどきっとあれは、きっと――

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