第180話 抱擁
「キャアアアア!!!scared!!!!scared!!!!」
ノアは生まれて初めての自由落下の衝撃でゴーグルのなかに涙をいっぱいに溜め込んでいる!
新海とノア二人の落下傘は二人が手を繋ぐのを待っていたかのように開傘し、二人を包む風の抵抗は暴風から強風に落ち着いたところだった。
「ノア!!私だ!!新海空だ!!」
「?ゥ?!ソラ!ソラ!怖かったっちゃー!!」
「もう大丈夫だ!パラシュートも開いた!!あとはこのまま降りるぞ!!」
「うううう!!!怖いっちやー!!!」
「大丈夫だ!!大丈夫!!」
新海はノアと結んだ両手に力を入れて必死に呼びかける!!
「ほらノア!雨が止んで光が差してきたよ!!とても綺麗だよ!!!」
「あぁ本当ね・・・綺麗・・・グスン!ズズズッ!!!」
ノアが少し落ち着きを取り戻し、雲の隙間から差し込んだ光に目を奪われたあと、視線をおもむろに光が照らし出す方に向けると、ちょうどそこはスコフィールド基地を示しており、無数の銃口がこちらを見上げてキラキラと反射している様子であった。
「えっ?!」「あれ?!」
思わず二人は視線を合わせる。その次の瞬間!
PANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPANPAN!!!!!!!
ヒュン!!・・・・ヒュン!!
耳元に空気を切り裂く弾丸の音!!
「キャアアアア!!!!撃たれてる!!撃たれてるぅ!!!めっちゃいっぱいぃ!!!!!怖いっちやー!!!!」
マズイマズイマズイマズイぞ!!
頭上の落下傘を見ると、なんてことだ!ノアの落下傘に次々と小さな穴が!!銃弾の貫通だ!!!しまった!!ノアも見上げて見つけてしまった!!
「キャアアアア!!!!撃たれてる!!撃たれてるぅ!!!めっちゃいっぱいぃ!!!!!落ちるっちゃぁ!!怖いっちやー!!!!」
ノアは空中でジタバタとしだして両手の握力が弱まってきた!
マズイ!このままでは離れてしまう!!
「ノア!!!」
私は無我夢中でノアに接近し、両足でノアをホールドすると、両腕でも強くノアを抱き締めた!!!
「怖いよー!ソラ!!Help me!
ソラァァァ!!」
ヒュン!!ヒュン!ヒュン!!
耳元に空気を切り裂く弾丸の音は徐々に間隔が短くなってきている!!
クソ!このままでは命中するか、落下傘に大穴が空いて落下するかだ!!
神様!!ハワイの神様!!なんとか助けてください!!
新海はノアを抱き締めながら強く祈った。
その一瞬。
華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華華
!!!!!!!!!!!!!!!!!
辺りを強い光が覆った!!!
新海とノアの眼はその眩しさで一瞬で視力を失う!
「何?!」
そして数秒後!
弩豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪貫唖唖阿吽!!!!!!
業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業ゥゥゥ!!!!!!
凄まじい轟音が響き渡り、衝撃波が二人を襲う!!
「キャアアアア!ソラ!!ソラァァァ!!」
「うわわわぁぁ!!!この爆音と爆風!!!大和の艦砲射撃だ!!!間違いない間に合った!!!」
「キャアアアア!ソラ!!ソラァァァ!!」
「ノア!大丈夫だ!大丈夫だよ!地上の敵は・・・・・」
新海は視力が戻ってきて改めて見ると、アメリカ兵が集結していた地点には大穴が空き、どデカいミキサーにかけられたみたいになっている。
こんな光景をノアに見せるわけにはいかない。
「落ち着いて!ノア!もう大丈夫!!」
「キャアアアア!Help me!」
だめだノアはあまりの衝撃波にバタバタと錯乱している!!こうなったら!!
ズ儀ュゥゥゥゥゥン!!!!
新海は、元々強く抱き締めていたのだ。そう決めたら、自分でも意外と、そう、まるでこうなることが自然な動作のように、ノアの唇を奪った!
「んんんんんんぅ・・・・・・」
ノアの眼が驚いたのは一瞬、凄まじい衝撃波で恐怖の頂点に達して我を忘れていたノアは、新海の想像を絶する一撃で体中の力を奪われ、その心に吹き荒れていた暗黒の嵐は、その想像を絶する優しさで桜吹雪へと変貌を遂げた!!
ノアに出来ることは、目をつぶって新海を強く抱き締めることだけだった。
そして数秒間、少し不安になったノアは、そっと目を開けてみた。
そしたら、当たり前のように優しい眼で見つめ返してくる新海の瞳を間近で見て、完全にその心を撃ち抜かれたのであった。
そして二人の落下傘は、フワフワと桜の花びらのように落下するのであった。
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