第174話 Kaikan
ザッザザッ!
Triple star専用ボーイングP12戦闘機、キャプテンマクガイア機の無線のスケルチが雑音を奏でると、マクガイア大尉は異変を感じ、周囲に目を配る!!
右後方を振り返りジョージ少尉を視野に入れると同時に、ジョージ少尉から無線が入ってくる!
「新手です!3時の方向1機の模様!!またフロートファイターです!!!」
ジョージ少尉は大きく右方を指差しながら声高に報告する!
「Okay Okays!!落ち着け!さっきの生き残りか?1機のみとは考えにくい!他に敵機は居ないか!周囲の見張りを厳にせよ!!」
Triple starの各員は首をぐるぐる回して周囲の見張りを入念に行う!
「・・・・ジョージ!サンダース!他には発見したか?!」
「こちらジョージ!あの1機のみです!他には見えません!!奴は単独と思料されます!!」
「私も同じ意見であります!!」
「そうか、私も同じだよ。ということは、奴は仲間が3機撃墜されたにもかかわらず、たった1機で我々に戦いを挑もうということか。少しは性能が良いようだが所詮フロートファイターだぞ?」
「ジャップは皆ド近眼だそうですから、我々に気付いていないのかもしれませんな!!」
「全くだ!!ワッハハハ!ワハハハハ!!」
「よし、とはいえ先程の奴は強敵だった!!今度の奴も強敵の可能性が高い!!さあ奴が接近してくるぞ!サンダース!ジョージ!フォーメーションケルベロス!!サンダークラウドアタックをかける!!一撃で決めるぞ!!」
「フォーメーションケルベロス!!サンダークラウドアタック2号機了解!!」
「3号機了解!!」
Triple starの3機はトライアングル隊形をとる!!
牙牙牙牙牙牙牙牙牙牙ゥ!!!!!
仄暗い空に召喚された冥界の番犬はその牙を剥き出すと、プラット・アンド・ホイットニー製R-1340D 空冷星型9気筒500馬力級エンジンが唸りをあげて戦場にこだまする!!
新海はスロットルを全開にすると、三菱空冷星型14気筒瑞星13型八百馬力級瑞星エンジンが唸る!
図度度度度度度図度度度度度度図度度度度度度図度度度度度度!!
高度は1800メートル!零式水上観測機は最高速度時速370キロメートルに達する!!
敵機との相互の距離は約3000メートル!
不意に敵編隊は反航戦で正面から撃ち合うと思わせて急上昇を始める!まるで相撲の立ち会いにおいて呼吸が合わず仕切り直しをするかのような動き!
ズ没!!ズ没没!!!
そのまま敵編隊は灰色の雨雲に姿を消す!
「雲の中だと!?逃げるのか?」新海は一瞬逡巡する!
「違うソラ!!すぐに攻撃が来る!サンダークラウドアタックよ!!」
「雷雲?!このまま進めば殺られるのか!下降や旋回も不利だ!ならばこちらも突っ込むぞ!!」
新海は操縦桿を一気に引き付けて急上昇に移る!!
眼前に暗灰色の雲が広がる!!まるで質量を持った壁のようだ!
ズ没!!
若干の抵抗!!視界はほぼゼロになる!
「すぐに反転攻撃するならば!奴等はここだぁ!!!」
新海は何も見えない雲の中、7.7ミリ機銃の発射レバーを握り込む!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
頑頑頑頑頑頑!!!!!
「ウオオォ?!俺が命中を受けている!?」
トライアングルの中心に位置していたサンダース中尉機は咄嗟に回避行動をとる!
「サンダース!大丈夫か!クソ!」
雲中で盲目状態であるが、マクガイア大尉は隊形が崩れたことを悟る。
「Shit!!雲を出るぞ!!」
「Yes, sir!!」
ズ暴!!ズ暴暴暴!!!
先頭にサンダース機、少し離れてマクガイア機とジョン機が続いて雲中から降下する!
マクガイアは周囲を見るが敵機の姿は見えない!
「大丈夫か!サンダース!」
「少し被弾しましたが大丈夫です!」
「奴です!!後ろ!!」
ジョージが叫ぶ!!
「プランC!プランCだ!!!」
「プランC了解!!!」
「Set, go! 」
3機はパッと散開する!!!
ズ暴ゥ!!
零式水観が少し遅れて飛び出す!
「よし!先手を取った!!センキューノア!!次は散開か!しかも一糸乱れぬ動き!すごい練度だ!!」
「だが舐めるなよ!ノア!舌噛むなよ!!」
「はっ!はイィィィ!」
凄まじいマニューバ!空中戦闘機動が繰り広げられる!!
アメリカ陸軍スコフィールド基地上空、アメリカ軍は要塞化した陣地において、日本軍は数キロ離れて布陣を整えつつあるなか、その上空で空中戦の第2ラウンドが開始され、居合わせた将兵数万人は作業を忘れ、固唾を飲んでその勝敗を見守るのであった。
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
頑頑頑!!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
頑頑!!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
頑頑頑!!!!
弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾弾!!!
頑頑!!!!
新海機とTriple starは攻守を入れ替わりながら、一瞬訪れる射撃チャンスに発砲を重ねる!!
そして何度目かの旋回!左旋回の巴戦だ!!
4機はタイフーンのように重圧に晒されながら急旋回を続ける!!!
「ノア!!」
新海は両手で操縦桿を握りしめ叫ぶ!
「は!ふぁぁ!」
ノアは想像を絶するGに精一杯の様子だ!
「上方に敵機が居るだろう!?撃てないか?!どこでもいい!!」
「が、がんばるっちゃ〜!!」
ノアは歯を食いしばって数秒、旋回機銃の取っ手を握りしめ、引き金に指をかける!!!
「ソラァー打つっ!撃つっちゃよ〜!!」
「よし!!この場面を打破するには君の力が必要だ!!頼む!!!」
「okay!!fire!!」
番番番番番番番番番番番番番番番
キャアアアアァァァ!!!!
番番番番番番番番番番番番番番番
番番番番番番番番番番番番番番番
キャアアアアァァァ!!!!
番番番番番番番番番番番番番番番
番番番番番番番番番番番番番番番
番番番番番番番番番番番番番番番
番番番番番番番!!!!
キャアアアアァァァ!!!!
ノアが力いっぱい引き金を引くと、ルイスタイプ92式7.7ミリ旋回機銃上部の円盤型弾倉が回転し、約10秒間をかけて97発の残弾全てが何もいない上空に向けて撃ち尽くされた!!!
「オイ!ノア!どうした大丈夫か!!」
「ハァハァハァハァ・・・・Kaikan・・チャ」ノアは上気した表情で呟いた。
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