第154話 賽は投げられた
カエナ岬の北西、一旦はカエナ岬から遠ざかった鋼鉄の台風は、猛然と、再び岬に接近する進路をとり始めた。
その鋼鉄の台風の名前は、超弩級戦艦大和、戦艦伊勢、戦艦日向、戦艦山城。重巡洋艦最上、三隈、鈴谷。
合計7隻からなる大日本帝国海軍が誇る艦隊は、山本ターンと名付けた180度回頭を終え、時速44キロメートルという艦隊の最高速度で爆走する!
その迫力は巨大な鋼鉄が大海を猛然とかき分け、起こる航跡波は左右に波濤を現出させる!
超弩級戦艦大和の船首には、巨大かつ金色の菊花紋章が太陽の光を浴び、十六条の光を美しく放つ。
菊花紋章は天皇陛下の紋章、鈍色の艦隊を飾る唯一の輝きなのだ。
一方アメリカ戦艦部隊は、数分前の酸素魚雷の攻撃の影響で各艦回避運動を取ったために艦列が完全に乱れていた。
先程まで大和の周囲には敵艦メリーランドの放った40.6センチ砲弾が降り注いでいたが、ここにきて弾着はバラバラに拡がっていた。
「敵重巡洋艦に魚雷命中!」
観測員から報告が上がる!
オオ!やったぞ!!
大和艦橋内はジリジリした緊張感から一気に空気が変わる!
山本長官以下も双眼鏡でその光景を見届けている。
「長官!酸素魚雷が命中しましたぞ!」
宇垣参謀長が嬉しそうに双眼鏡を覗きながら話す。
「早爆でどうなるかと思いましたが、なんとか当たってくれましたな!」
黒島参謀も嬉しそうに話す。
「そうだな、酸素魚雷は今まで近距離の実射しかやってこなかったからな。まさか早爆するとは。」
大和長官は表情を変えずに答える。
「はい、問題なく命中したものがあるということは、信管の設定を過敏に設定しすぎた可能性が高いです。酸素魚雷は信管の設定を変えられるのが特徴でしたが、裏目に出るとは思いませんでしたな。」
「初めての実戦で不発を恐れ、少し過敏に設定したのかな。」
「はい、おそらく。間もなく水雷戦隊同士の交戦となります。」
「うむ、念のため水雷戦隊に伝達する!信管の設定に注意せよ!」
「了解!信管の設定に注意せよ!」
直ちに復唱され、発光信号、手旗信号で命令が伝達される!
「水雷戦隊各艦から返信!了解とのこと!」
「早いな、まあ当然判っているだろうからな。」
「射撃指揮所!敵戦艦との距離はどうだ?」
「ハッ、敵戦艦メリーランドとの距離は、約2万であります!」
山本長官は、双眼鏡を通しても明らかに近付いている敵戦艦を見詰めた。
「十分だ。やはり距離は接近しないとな。しかも敵艦隊は艦列を乱している。」
宇垣参謀長も、黒島参謀も、高柳艦長
艦長も、これが絶好の機会であることは解っている。あとは命令を待つのみ。
そして山本長官は双眼鏡をゆっくりと降ろすと、艦橋内の全員を見て告げる。
「各艦に通達!目標は戦艦メリーランド!!全砲門を集中させよ!!各艦長指揮で始め!!」
「目標は戦艦メリーランド!!全砲門を集中!!各艦長指揮で始め!!」
「それでは大和の指揮を頼むぞ!高柳儀八艦長!これから一気に突撃する!!」
「突撃と接近戦こそ大和魂の真髄よ!!奴等に我が国の!我が軍の魂を見せ付けてやるのだ!!!」
「ハッ!!」カツン!
高柳儀八艦長以下、全員が敬礼すると、艦長は直ちに命令を下す!
「打ち方用意!!目標敵戦艦一番艦メリーランド!主砲、方位盤射撃指揮始めィ!!」
剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛剛業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業業豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪豪!!!!!!
必殺の九一式徹甲弾は低い発射角度で発射され、両者を破壊の弾道という虹で繋いでゆくのだった。
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