第122話 秘密基地
やがて舟は岸壁に近付いていく。
幾つかの岩をスイスイと避けながら進むと、海からでないと気が付かないような入り組んだ岸壁にぽっかりと洞窟が口を開けていた。
彼女は鼻歌を歌いながら舟を進ませる。
洞窟内に入ると暗くなり、大丈夫かと不安になったが、すぐに光が降り注ぐ幻想的な空間に至った。
舟を着けると彼女は岩に飛び乗り、胸を張り両手を広げて高らかに唄った。
「さぁ、着いたわよ!ようこそ私の秘密基地、よこはまらぐーんよ!」
「ヨコハマラグーン?すごい素敵なところだけど、日本の横浜かい?」
「そうよ、日本人はみんな言っているわ、横浜をまた見たいって。とても綺麗なところなんでしょう?」
少し考え込む。
「そうだね。横浜かぁ、横浜港はとても大きくて美しく、西洋的な建物が立ち並んでとても賑やかなところだよ。そうだ、イオラニ宮殿のような建物もあるかな。」
「へぇ!あとで聞かせてよ!ソラ!」
彼女はキラキラと眼を輝かせる。
「オッケー!」
「さてと、見てのとおり、ここは私だけの秘密基地だっちゃ、そこのチェアで休めるし、奥には毛布と少し食べ物もあるわ。私の家はここからそんなに遠くないけど、もう帰らないといけないわ。明日の朝も食べ物持ってくるからここにいるっちゃよ。」
「ああ、本当にありがとう。助けてくれたこと、そしてこんな素敵な秘密基地に招待してくれたこと。本当に感謝しています。」
すこし見つめ合うと、お互いに恥ずかしくなって目をそらした。
「それじゃ!またくるね!」
ノアは再び舟に乗り込み、あっという間に出ていってしまった。
私は少し洞窟内を探検する。
奥は少し行くと狭く暗くなるが、ノアの言うとおり毛布とビーフジャーキー、そして、救急箱のなかに小さめだがナイフが入っていた!
ノアありがとう!
入り口も行ってみると、少し厳しいが歩いて出ることも可能のようだ。
しかし、絶好の隠れ家を見つけてしまった。ここならアメリカ軍も気付かないだろう。
飛行服を脱ぎ、干して毛布にくるまりロッキングチェアに座り込む。
「淵田隊長大丈夫だったかな、那須と神鳥谷、心配してるだろうなぁ。ゴメン今俺は別の世界に来ちまったみたいだ。」
オアフ島の午後、ヨコハマラグーンという名の洞窟は、天井の隙間から差し込む光が乱反射して一面を青碧色に染め上げるのであった。
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