第94話 フランクリン・ルーズベルト大統領の議会演説
第32代アメリカ合衆国大統領、フランクリン・デラノ・ルーズベルトは59歳、40代で病により両足が不自由となり、車椅子を頼るハンデキャップを抱えながらも大統領職を8年務めている。
その手腕は世界恐慌からアメリカを浮上させるなど、世界的、歴史的にもその名を知らぬ者は居ないであろう。
ルーズベルト大統領は今、ワシントンD.C.のアメリカ合衆国連邦政府連邦議会において、今後の世界情勢を変える極めて重要な演説を始めようとしていた。
「副大統領、下院議長、ならびに上院議員及び下院議員の皆様。
昨日、1941年12月8日、アメリカ合衆国は、大日本帝国から、綿密に計画された奇襲攻撃を受けました!
この卑劣極まる攻撃は、アメリカ合衆国の受けた最大の屈辱として、未来永劫歴史に刻まなければなりません!
これまで、我々アメリカ合衆国は、日本政府や天皇との協議を続け、平和的な関係を維持していました。
しかし!
日本の航空隊が突如オアフ島に爆撃を開始して大損害を与えた1時間も後で!日本大使はハル国務長官に声明文を差し出したのです!
しかもその遅れて出した声明文の内容は、「これ以上外交交渉を続けても無意味だ。」という記述があるのみで、戦争や軍事攻撃につながる警告や兆候は記載されておらず、全く宣戦布告文と読み取れる内容ではないのです!
日本からハワイまでの距離を考えれば、この攻撃が、何週間も前から周到に計画されたものであることは明らかです。
その間日本政府は、平和の継続を願うという偽りの声明で、我らアメリカ合衆国を欺いたのです!
昨日のハワイ諸島に対する攻撃は、アメリカ軍に深刻な被害をもたらし、非常に多くの同胞の命が失われました。
さらに、日本は香港、グアム島、フィリピン諸島を次々に攻撃しています。
そしてハワイでは今日も空襲を受け、更に我が軍に被害が出ております!
我が軍も反撃して敵艦隊に大打撃を与えましたが、日本の艦隊はいまだにハワイ近海に潜んでいる可能性が高い状況であります。
日本が、太平洋全域にわたって奇襲攻撃を仕掛け、侵略を始めたことは明らかです!
私は、陸海軍の最高指揮官として、我々を守るため、あらゆる措置を取るよう命じました。
全ての国民は、この奇襲攻撃がいかに卑劣なものであるか、決して忘れてはなりません!
そして、国民は、この侵略に打ち勝つため、どんなに長くかかろうとも、正義の力で必ずや完全な勝利を掴み取ることでしょう!
戦いは既に始まっています!
我々の国民、我々の領土、我々の利益が重大な危機に立たされています!
我々の軍事力への信頼と、我々国民の不退転の決意をもって、必ずや勝利を勝ち取ることを神に誓います!
私は議会に対し、日本が仕掛けた正当性のない卑劣な攻撃の結果、アメリカ合衆国と大日本帝国が交戦状態に入った旨の布告を宣言するよう求めます!」
一瞬の空白の後、議事堂は凄まじい拍手と激励の声が巻き起こり、アメリカ合衆国議会の歴史においても経験したことのないうねりとなって、アメリカ合衆国国民に伝わってゆくのであった。
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