第26話

私は高速で危険空域を駆け抜けつつ、すばやく周囲を確認した。


敵の対空砲は爆発の影響で私を見失い、特殊潜航艇が昇華した灰褐色の水龍に向けて発砲を続けている。


私は低空のまま高速離脱し、一旦海洋に出たあと、高度を上げた。


眼下に広がる真珠湾は、十数分前には美しい輝きを放っていたのに、今は立ち上る黒煙が全体を覆い、まるで巨大な魔法陣の特殊文字が不気味な光を放ち、この世を抹殺する召喚魔法を現出させるかのようであった。


再びそんな恐ろしい真珠湾を見ながら高度を上げると、無事だった列機の2機が翼を揺らしながら近寄ってきた。


手信号で会話をする。

大丈夫ですか?

問題ない大丈夫!

すいません!離れていて追従できませんでした!

問題ない大丈夫!

翼に穴がいくつか開いていますが大丈夫ですか?

問題ない大丈夫!

残弾は?

20ミリは20発はある!まだまだやれる!

私が笑顔で答えると、列機の二人も笑顔で応えた。


私たちは再び散開し、制空任務を続けた。

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