第20話 特殊潜航艇

我々は更に上空に位置し、広範囲に散開した。


アメリカ軍の対空砲は2連装や4連装で、鈍!鈍!鈍!鈍!と重低音を響かせて撃ち込んでくる。


口径は40ミリはある。我が軍の対空砲は25ミリだから、弾はかなり大きく、当然破壊力も抜群だろう。


あんなのが直撃したら、バラバラになっちまうぞ

私は思わず呟いた。


アメリカの対空砲火は、高度を5000メートルとれば、おおむね脅威とはならない様子だ。

しかし弾幕の形成は速く厚く、突入は決死の覚悟が必要と思われた。


私は、対空砲火に晒され全く落ち着かないが


当たるものかよ、下手くそが!


と大声で自分を奮い立たせ、第二次攻撃隊のために周囲の見張りと、対空砲の配置状況等を観察していた。


しばらく観察を続けると、停泊中の戦艦が一隻、いまだ炎をその身に纏いながら蠢き始め、緩やかに離岸し、真珠湾の出口に向けてその巨体を進ませ始めた!


予定では、動き出す前に第二次攻撃隊が止めを差す予定であったが、敵の士気は高い。


面倒なことになってきたな。


私は呟きながら、その戦艦を見ていると、ふと、その付近の海面に、ホンの僅かに、潜望鏡が突き出したのが見えた。

真珠湾の海面は、漏れだした重油と炎で地獄の様相であるが、そのなかで、揺れる炎を反射させて鈍色に輝く潜望鏡と、船体が視認できた。


あれは、魚雷?

いや、潜望鏡があるから、小型の潜水艇か?

まさかアメリカ軍のものではないから、我が軍の特殊潜航艇か!


船体に日の丸はないが、海軍の特殊潜航艇については、噂は聞いていた。


真珠湾はとても浅く、潜水艦では侵入できない。


そこで我が海軍は、特殊潜航艇という二人乗りの潜水艇を開発し、酸素魚雷を搭載して湾内に忍者のように忍び込み、海中からも打撃を与えようとするものらしい。


まさかこの眼でその勇姿を見ることが出来るとは。


必ず見届けるぞ!がんばれ!















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