第13話
我々3機編隊は、事前に示し合わせたかのようにお互いに接近し、密集隊形をとった。
隊形には、縦隊、横隊等あるが、一点攻撃力重視の密集隊形だ。
高度、速度の不利を数と練度、気迫でカバーし、弾幕を張って敵を怯ませ、判断と狙いを狂わせるのだ。
私の集中力はさらに高まり、五感が研ぎ澄まされて完全にゾーンに入った。
一瞬敵機が太陽から外れ、その姿があらわになる。
プロペラの回転するさまもスローに見える。
敵機はP40だ。ご丁寧にしゃくれた顎に口が描かれている。
鮫か何か知らんが、かえって虚勢を張っているように見えて、私の口元が緩んだ。
距離はまだ遠いが、我々は早めに撃ち始める。
敵の動揺と応射を誘うのだ。
零戦の武装は、両翼に20ミリ機関砲と機首に7.7ミリ機銃2丁だ。
おそらく7.7ミリはコックピットを直撃しなければ撃墜は難しいだろう。
両翼の20ミリは内側を向き、200メートル先で収束調整されている。
反航戦の場合、必殺距離はあまりに一瞬だ。
しかしそれは敵も同じ、おそらく収束調整は同程度。従って必殺距離を誤らなければ、そうそう当たりはしないのだ。
しかも弾は発射後激しく下降するから、それを見越した射撃をしなければならない。
弾弾弾弾弾弾弾!鈍鈍鈍鈍鈍鈍!
こちらは3機が撃ちまくる!凄まじい弾幕が形成された!
番番番番番番番!番番番番番番番!
狙い通り!敵もこらえきれず応射してくる!後ろの列機も撃ち始めた!
そんな遠くで当たるかよ!
これで後方の味方機が狙われる確率は低い。
あとは捉えるぞ!
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