第6話

私…もしかして、大ピンチなのでは?


取り敢えずここから出ないと!

そう思い見渡すも、窓は有れど開いていない…どうしよう。


私がオロオロとしていると、扉の開く音がした。


あ、扉から出れば…!


そう思った私は一目散に男性の足の間をすり抜け、扉から出た。



しかし扉から出た先の窓も開いていない。

絶望だ。


「こらこら、逃げちゃ駄目でしょ。きみの部屋はこっちだからね」


小さい私は軽々抱き上げられ、元の部屋へと戻された

めっと優しく鼻をつんと指先で突かれ、思わずぺろりと鼻先を舐める。

舐めた鼻先は甘い猫用ミルクの味がした。

その味に触発され、くるる、と小さく私のお腹が鳴る


男性は穏やかな表情で微笑むと「どうぞ」と、ミルクが注がれたお皿を私の前に差し出す

怖いな、毒とか入ってないよね…先ずはミルクの香りを嗅ぐも、普通に猫用ミルクの香りがした

それをみて私の気持ちを察したのか、くすくすと笑う


「毒なんて入ってないのに。警戒心が強いって事は君は野良ちゃんかなぁ」


違う、と返事をしたつもりで私はみゃあと鳴く。


「お返事できるの凄いねぇ。そっかそっか」


納得してくれたのかな…なんて思いつつ、私はミルクを飲み始めた。


「じゃあこれからよろしくね、猫ちゃん」


…あれ。よろしく…よろしく!?

今よろしくって言った!?


私は驚き、思わず顔を上げて抗議の声を上げた


「みゃあ!みゃあー!」


「うんうん、うれしいねぇ。あ、名前はもうちょっと待っててね?僕ネーミングセンスがあまりなくて…。あ、僕は薫だよ。なんて…猫ちゃんに名前言っても分かんないよねぇ。」


どうしよう…話が通じない…、私はこの薫さんの言葉分かるけど、私の言葉は届かないんだ…。


「あれ、もう食べないのかな。きみ身体小さいからもうちょっと食べないと大きな猫ちゃんになれないぞ~」


そう言って薫さんはまだミルクの入っているお皿を片す為に先程の部屋へと戻っていった。


私はどうしたら分からず、ただ座っていた。

薫さんは優しい人だし、ちゃんとお世話もしてくれそうだ。此処にいても私には特に問題はない。

飼い主は…きっと今私の事を探しているだろう

でも、飼い主にはミツが居るし、きっと私が居なくても大丈夫…。


そう思考を巡らせていると、気付いたら私の意識は夢の中

お腹が少し膨れて子猫らしく寝てしまったらしい


因みに、夢の中の私も何故か猫だった。

…この身体に慣れ過ぎじゃない??

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