第2話 入学式

ピピピピッ ピピピピッ ピピピピッ


目覚ましの音で重い体を起こす。

朝日が窓から差し込み男の顔を照らす。

部屋はとてつもなく汚く、いたるところに脱ぎ捨てられた服や、お菓子のゴミ、マンガとライトノベルが散漫している。

「うるさいな~」

昨日は新学期が始まることに緊張し、なかなか寝付くことができなかった。

頭を掻きながら、汚い床の上を歩きだす。

「痛い!!」

鋭い激痛が走る。

足に何か刺さったようだ。

「何が刺さったんだ?」

足を見てみると固まった米粒が画鋲のようになっていた。

幸いにも血は出なかったが幸先が悪いな。これから入学式だというのに。

「そろそろ片付けないとだめだな……」

痛がっている間にも目覚ましは鳴り響いている。

ドンッッ!!!!

隣の住人がさすがに切れたようだ。

何を言っているかはっきりとは聞こえないがとてつもなく怒っているのは誰にでもわかる。

体がだるいが頑張って目覚ましを止める。


朝ご飯は自分で用意した。

俺は朝に弱いので、簡単なものしかできない。

ご飯をよそって昨日の味噌汁入れる。目玉焼きも作り、急いで食べる。

目玉焼きは失敗して下が真っ黒こげになっていた。

食べながら溜まっているアニメを見て、元気をチャージする。

歯を入念に磨き、制服を着た。制服は素晴らしい!いちいち選ぶ必要がないので朝に弱い俺にはピッタリの制度だ。

別に?ファッションセンスがないとか言われたから、制服信者になったわけでは断じてない。

「ふぁぁ。今日は全然寝れなかった…寝付けなくて筋トレしたのは逆効果だったな。学校でちゃんと起きていられるか心配だ。」

体を疲れさせた方がよく寝られると思い、夜の公園で軽く腕立て伏せ100回、スクワット100回をしてからベッドに入った。しかしながら、交感神経が副交感神経よりも優位になると血管が収縮して興奮状態に陥ってしまうので寝つきが悪くなるようだ。


俺は東京に住んでおり、家から学校まではとても近い。

おかげでギリギリまで眠っていられるのがとてもありがたい。

今日は東帝高校の入学式なので早く家を出て8時頃学校に到着した。

結構多くの学生を見ることができた。

校門のところに新入生の行くべきところが記してある。

「えーと、右側の体育館に行けばいいんだな。」

俺は事前に配られていた番号のカードと同じ番号の席に座る。

「ここだな」

…入学式は順調に進み、各自の番号に対応した教室に案内された。(俺は当然のごとく式の間寝てしまっていた。)

「みなさん、入学式お疲れ様です。1-1の担任となった九条萌香です。みなさんよろしくお願いします。」

女性の人だ。身長は160cm程で、髪はショートで桃色。可愛らしい感じの先生だった。

「では、早速ですが自己紹介をしてもらいます。自分の名前と趣味を紹介しましょう。」

来てしまった自己紹介……この時間は自分の順番が回ってくるまでずっと心臓がドクドクと鳴り響き苦しくなってくるんだ。

(早く来てくれ頼む)俺は心の中でそう願った。

「次の人~、村上くん。おーい聞いてる?」

俺は先生の声に気づく。さらに緊張に拍車がかかったのが自分でもわかった。

「村上智尋です。」声が裏返り。恥ずかしさが一気に込み上げてきた。

「趣味はマンガとアニメです。」

自己紹介が終わてもまだ顔がすごく熱い。絶対耳まで真っ赤なんだろうな…

そんなこんなで全員の自己紹介が終わった。


「では自己紹介も終わったので、早速授業に入っていきまーす。」

先生はとても張り切っている様子だったが、生徒の方は真逆のようだ。

ギャーギャー騒ぎながらも先生の言うことに従った。

教室を移動し、広い大講義室のようなところに連れてこられた。

講義室は300人ほど入れそうなほどだ。

「今から、この方に授業してもらいます。」

先生に紹介された人が一歩前に出る。

「私は高木だ。早速だが授業を始める。お前たちは今この世がどうなっているか知っているか?」

高木はプロジェクターを使い授業を始めた。

「昆虫のおかげで我々人類は食糧危機から逃れる可能性を持っていたが、一つの隕石により全てが破壊されることになった。隕石には未知のウイルス、そして蟲が付着していた。それらは人間にはそれほど影響はないと考えられている。しかし、虫は別だ。体の構造が変化し、我々人類を破壊しに来ている。」


すると次々と生徒から質問が投げかけられる。


「どこからその隕石は来たんですかー」

「詳しいことはわかってはいない。」


「変化するって具体的にはどうなるんですか」

「体の大きさが普通より大きくなったり、もともとの形が変化してしまっている個体もある。個体によって様々なので完全には解明されてはいない。」


「何で人間を襲うんですか」

「逆襲なのかもな。人間への」


みんな意欲がすごい。俺はただ聞いているだけだった。


――――授業も終わり帰宅した。


TVをつけると蟲撃退用の特殊部隊を設置することが放送されていた。

俺が入学した学校に来る奴らは蟲と戦うことを目的とされ集められていた。どのような基準で選ばれているのかは定かではない。蟲を実際に見たこともない人間が、使い物になるのだろうか。学校の全校生徒は300人。一つの学年で100人だ。入学式には上の学年がいなかったので実感がわかなかったが、それにしてはえらく校舎が小さいと思えた。今度秋姉に聞いてみるとするか。夕飯はミートスパゲッティをつくった。麺を茹でる時間が足りなかったのか、少し硬い印象だった。


明日は休みだ。好きなだけ夜更かしできるので、溜めたアニメを消化する。

結局寝たのは5時だった。

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