ひょーりいったい

すけべおじさん

第1話

パタパタと布がたなびく音が聞こえる。奴はすぐそばにいるということだ。

部下が体力の限界で屋上に着くまでにいなくなってしまう、ばんばんばん、と階段を駆け上がりドアを勢いよくあける。眩しさに目を眩ませながらも目的の男を見つけたので、大きな声で話しかけた。


「怪盗エンジェル!お前の逃亡劇もここまでだ!盗んだ宝を返して、警察のお縄になれ」


そう言って怪盗エンジェルを睨みつける。

しかし、怪盗エンジェルはフハハ!とわざとらしく笑ったかと思うとバサバサとマントをたなびかせる。


「そういわれて大人しく捕まるかわいらしい怪盗なんていないだろう?お断りだ!」


そう言われると怪盗エンジェルが屋上から落ちていく。急いで走って捕まえようとするが落ちていった先には白い羽がパラパラと舞っているだけだった。


「……くそ、また、捕まえられなかった」


_____


『怪盗エンジェルまた参上!今回盗まれたものは__』


ぶちり、怪盗エンジェルと聞こえた瞬間に俺はスマホを投げた。


「だーーーー!怪盗エンジェルに遊ばれやがって!そうやってテレビで取り上げたりちやほやするからあいつは調子乗るんだろ!」

「 海真珠さん落ち着いて~!誤タップだし、大事なスマホを誤タップで捨てちゃだめ~!壊れたいますよ!」

「うるせえ!誤タップして流れるような場所にあるニュースチャンネルがわりい、俺は悪くねえ。スマホが壊れたら修理代そのチャンネルに請求してやる……」

「海真珠さん怖いっす…」


そう言って 天使は俺のスマホを拾い上げて、また俺の隣に戻ってくる。今日暑いんだからそんなに近づかないで欲しい。あちい。


「暑いんだからそんなに近づくなよ」

「サングラスしてても違和感のない日っすよね……海真珠さんサングラスもっと可愛いのにしません?かわいいお目目がもっと見えるやつとか…」

「俺のまつ毛バサバサを見たいのなんてお前くらいだから真っ暗なサングラスでいーんだよ、馬鹿」


そう言って天使の頭を小突く。外だからあまりいちゃつく予定はなかったのだがつい一緒にいるといちゃいちゃしてしまう。いや、してない。してないからな。


「まあ海真珠さんが過剰に反応しちゃうの分かります。何度も逃げられちゃってますもんね」

「……おう」


警察である俺は怪盗という名の【泥棒】を捕まえようと日々奮闘しているのだが、あまりにもうまくいかないので困っている。

これであいつを取り逃がしたのは5回目である。もう5回も取り逃がしてしまって肩身が狭かったりする。ただでさえ見た目のせいで部長にはぶつくさといわれてしまっているというのに。俺は潜入調査をするために悪い見た目で大丈夫だと言われているがそろそろ普通の人間のような見た目でもいいのではないか?という話をぐちぐちとされる。

…リーゼントにした理由は天使が潜入捜査時にリーゼントにしたら1日中褒めてくれて、嬉しかったからリーゼントにしている。……惚気だからそりゃ変えろと言われたら変えるしかないが、すごくうれしかったのでできれば変えたくない。まあこのことは天使に話していないので無視してほしいが。


「怪盗なんてかっこよく言っておきながら、結局は泥棒だろ。泥棒は捕まえなきゃいかん」

「……ふふ、そうですね。でも今日おやすみですよ?僕と一緒に遊びましょーほら、そろそろ電車きそうですし乗りましょ!」


平日だから手をつないでもいいですか?電車、人いたら離すので!と聞いてくる天使に頷く、まあ人がいて離してくれそうな気はしないが。

今日は休みなんだ。出来るだけ恋人に触れたいという思いはないでもない。まあ家で一緒に居ればよかったという思いはぬぐえないが水族館に行くのだ、まあ涼しいといいな。

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