せいき

バブみ道日丿宮組

お題:宗教上の理由で正義 制限時間:15分

せいき

 声が聞こえた気がした。

 透明感のキレイな旋律。

 どこからだろう。薄暗い牢屋の中からは当然見えない。

 換気のためについてる小さな窓からも見えない。

「……」

 それでも優しい気分になれた。

 今から起こることを少しでも許せるような……そんな気分。

 僕は宗教上の偽りの正義を行使したために逮捕された。助けちゃいけないなんてこの街の宗教はおかしさしかない。

 助けた少女も感謝の言葉を述べたし、僕は間違っちゃいない。

 宗教が正義なら、僕がやったことは悪なのだろう。

「……はぁ」

 宗教の異端者として認めるか否かの尋問は暇だ。相手が喜ぶ返事をしない限りは永遠と問いただされる。

 当然喜ぶ答えなんて上げる気もないので境界線を超えることはない。

 少しでも超えていいという理由があれば、宗教にも入ろうかと思うのだけど……そんなのは一つもない。こんなものにどうして皆は従ってるのだろう。

 確かに神の存在は偉大だ。いるかいないかはさておき、人の願望を集める存在は夢が夢であり続ける。できないことをできると応援してくれる。

 そんな存在ーーがいるわけもなく、願いは叶わない。

 もし叶うなら、今すぐにでも僕は信じよう。


 ここから出して、と。


 声はまだ聞こえる。

 僕にとっての神はこの声の主なのかもしれない。

 会ってみたいし、話してみたい。

 どうしてそんな声を出せるのか、なぜ牢屋の近くにいるのか。気になることは多い。話すことになれば一日は軽く超えるはず。楽観視するわけじゃないけど、声が聞こえる限り僕は抗い続ける。

 この世に神はいない。

 いるのは生を受けた動物。そして理解し合うという意思。それらが絡み合って世界を構成してる。

 僕らは一人であって全てじゃない。

 だから……わかりあえない。あおうともしない。自己完結の思考を押し付ける宗教はある意味で考えをまとめてるかもしれない。

 けど、一定の感情だけしかないのはやっぱり間違ってると思う。

 まぁ……向こうからしたら僕のほうが間違ってるというのだろうけどね。

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せいき バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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