竜の巣窟 〜鍾乳洞に入ったはずなのにドラゴンが出てきました!〜
BOXY
冒険のはじまり
第一話 ネットニュース
1. ネットニュース
竹森信、23歳。
突然だが、仕事を失ってしまった。
間の悪いことに夏の長期休暇前のことだ。
それまで飲食店で勤務をしていたのだが、長引く不況のために会社が持ち応えられなかった。
店長は店をたたむ前に、何度も謝ってくれるような優しい人だった。だが、この不景気なご時世では仕方がないし、店長を恨む気にもなれなかった。
すぐに仕事を捜そうとも思ったのだが、あまりにも突然だったし、夏の連休前ということもあって、少しくらいぼーっとする時間を持ってもいいかなと思った。
それで、「突然時間が出来たのでラッキー!」くらいに考えて、ゲーム三昧の日々を送ろうと思った。
はじめの一日日は良かった。けれど、ゲームをやり始めて二日目になると、仕事を失って所属のない怖さのために、気持ちが押しつぶされそうになってしまい、全然楽しむことができなくなっていた。
仕事をしていたときは、ゲームをするのが生きがいとまで感じていたのに、今となってはそんな気持ちもどこかにいってしまったようだ。
それからは、何をしても、この先どうなるか分からない不安のために、気持ちが沈んでしまって何も手が付かなくなってしまった。
この状態を変えるには、やっぱり仕事を見つけた方がいいのかもしれない。そう思ってネットで仕事の求人情報を検索してみた。
けれど、大した学歴もなく、資格もなく、ただあるのは、飲食店勤務一年半という実績の自分を必要としてくれる職場はそんなに簡単には見つからなかった。
そうすると、今度は悪いことばかり考えてしまう。自分はもうこのまま仕事を見つけられないのではないか? 今住んでいるこのアパートもいつか追い出されるかもしれない。そんなネガティブな考えが次々と浮かんでくるようになった。将来が見えない現実に胸が締め付けられそうな思いになるのだ。
持っている資格は、英検3級、普通自動車免許。
地方の三流大学を卒業し、飲食店チェーンに一年半勤務。履歴書に書けるのはそのくらいしかない。
特技も別にない・・・
自分の履歴書をしばらく眺めていても、そこから湧き上がって来る感情は「不安」の二文字だけだった。
それに極めつけは貯金も蓄えもないときている。
もう人生詰んだな・・・これは
それが今の実感だった。
これまで、そこそこ勉強はして来たつもりだし、学生の頃は部活もやって来た。中学ではマンモス校の卓球部。強豪校と言われ、そこでレギュラーのポジションをつかみ、地区大会ではベスト16まで勝ち残ったこともある。でも、うまくいったのはそこまでだった。
高校ではバイトをし、お金を稼ぐこと夢中になり、バイトと気晴らしにはじめたゲームにのめり込んだ。
自分は、どこでもそこそこのポジションにいるはずだと思い込んでいて、自分を甘やかして来たのだ。大学を卒業し、就活もうまくいかず、結局バイト先に努めることになった。
どこで間違えたのだろう。何を間違ったのだろう。でも、今さら何を考えても、どうしていいかよく分からなかった。
もう人生詰んでる・・・
そんな時、ネットで検索したある記事に目が留まった。
“〇〇鍾乳洞で、未知の鉱石発見か!”
その鍾乳洞は地元では有名なところで、今まで何度か行ったことがあった。記事を見て、不意に懐かしさがこみあげて来た。
記事によると、鍾乳洞の決められた観光ルートとは違うルートが地震の影響で見つかって、そこから未知の鉱石が発見されたのだという。
シンは、その記事を見て、そのまま財布を片手に、アウトドアショップに駆け込んだ。
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