桃色の決意

これじゃ駄目だと昔の美紗との楽しい思い出の数々に思考を飛ばす。


いつも一緒にいたいと言ってくれるのは、初めて会った時以降は美紗の方からだった気がする。


大人しい美紗の以外にも恋愛に大胆な面を思い出すと、

目を白黒とさせて真っ赤になっている子供の頃の自分を思い浮かべてみて、

嬉しいやら情けないやらで笑ってしまう。


(俺のガキの頃も威張っちゃいたが可愛いもんじゃないか。好きな子一人に大人しくなっちまうんだから。)


暫く声を殺して笑っていると、自分が見ていた美紗の真っ赤な顔を思い出す。


いつも私に好意を示してくれる時、彼女はどこか思いつめた雰囲気を醸し出していた。


(あっ・・・。)


気付いてしまった。


何故大人しく恥ずかしがり屋の彼女があんなにも私を追いかけてくれたのか。


彼女は幼い頃から体が弱かったために、そう長くは生きられないときっと無意識にわかっていたのだ。


「ぐっ・・・。」




そこまで考えに至ると、私は嬉しいやら情けないやらで、また声を潜めて息を漏らした。

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