第84話 ストーン

カーリングのTV中継を見ていた母が、思いついたように言った。

「あのほれ 手ついでっから 案配いいんだげんと どごで売ってんべね?」

どうやらカーリングのストーンが気に入ったらしい。

取っ手がついて持ちやすく出来ているので、漬け物石に最適だと言うのである。

どこで売っているのかと聞かれても、途方に暮れるだけである。

スーパーの店頭に並んでいるはずもないし...


「スポーツなんだがら 運道具店で売ってんべした」当たり前と言う顔をして妻が言った。

「んだて みだごどないじぇ」

「あだなもの 倉庫さでも しまてるんだべ」

「んだがした んだら聞いでみっべ」

老舗のスポーツ用品店「カスカワ」に電話をしてみることにした。


「はい カスカワです」若い女性が出た。

「もしもし あの~...カーリングのストーンって あっべがね?」

「はぁ?」

「カーリングのストーンだず...」

「あぁ ストーンね 少々お待ち下さい」

なにやら電話口でゴチャゴチャ話している様子。

(カーリングのストーンなて うぢであづがてないよね?)

(取り寄せだど なんとがなっけどな だれや?)

(わがらね おどごのひとだげど)

(確かよ~ 16個セットで・・・・)


「おまたせしました お取り寄せになりますが」

「んだがした なんぼすんのや?」

「16個セットでのお取り寄せになりますので 160万円くらいです」

「ほー 160万円! 1個10万円か たっがいんだね!」

「いかがいたしますか?」

「たがくて買わんねな~ いらねは どーもなっす」


「おばーちゃん あの石1個10万円もするんだど!」

「あちゃ~ たっがいなぁ 私の年金だど 漬物石も買わんねのがぁ...」

ガッカリした様子でまたカーリングの試合を見ていたが、諦めきれない顔つきであった。

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