第63話 ビジネスモデル
ベトナムでは外資系の企業が人気である。
一番人気は欧米系の企業だが、日系企業は社員を大事にすることが口コミで広がり、学生の間では大変人気がある。
社員を採用するためベトナムの日刊紙Thanh Nienに募集広告を掲載した。
若干名の採用なので、それほど多くの応募は無いだろうと思っていたが、採用試験当日に集まった若者は数十人に上った。
会議室を試験会場に考えていたのだが、一度に入れる人数は20名程度である。
「トイさん こだえいっぱいで 困ったなぁ」
「部長 今日ト明日 2回ニ分ケテ 試験シマショウ」
「んだなぁ...」
集まった若者を二組に分け、二日間で筆記試験と面接を行うことにした。
昼過ぎ一組目が終了し、事務所に戻るとダイちゃんが駆け寄ってきた。
「部長! 外ニ人ガ集マッテ 何カシテイマス」
「ほぉ 何しったんだべ?」
窓から見ると、会社正門のすぐ外に人だかりができている。
一人の男が号外のようなものを売りさばいているようである。
会社の前で何をしているのか、迷惑なことなのでトイさんに確認に行かせた。
「部長! 大変デスヨ コレ見テクダサ~イ!」
「なにや? ありゃりゃ こりゃ たまげだなぁ!」
男が売りさばいているチラシをトイさんが持ってきた。
なんとチラシには、先ほど行った採用試験の筆記問題と模範解答が手書きで記載されていたのである。
「あちゃ~ こだなごど するんだがした!」
「今日 試験受ケタ中ノ一人ガ 試験問題ヲ覚エテイキ 手書キヲ コピーシテ 売ッテイマシタ」
「ほぉ~ すごいなぁ なんぼで売ってだのや?」
「一枚 3万ドン デシタヨ」
商魂たくましいと言うべきなのか、新手の商売を考える能力が凄いのか、日本人には思い付かないようなビジネスモデルである。
3万ドンで40人近い人に売れば、1,200,000ドン(約5,700円)にもなり、ちょっとした小遣いになる。
「トイさん その男を 採用すっべ!」
社員教育を行いビジネスルールを教え込めば、素晴らしい能力を発揮し会社を支える人材に育つことを確信した瞬間であった。
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