第95話 お好きですね~

海外出張に出かけることになった。

出張先はマレーシアとベトナムである。

今では両国ともビザ不要だが、航空券は予約しなければならない。

早速、旅行会社に電話して担当者に来てもらった。


「いつもお世話になってます 御社担当の栗原です」

「あぁ よろしぐなっす」

「どんなスケジュールを考えているのですか?」

「一週間で マレーシアとベトナムの工場ば まわてくっだいんだっす」

「かしこまりました」

出発日や会議の日程などを確認しながら、分厚い時刻表を片手に栗原さんは手際よくスケジュール表に記入している。

「ところで どこの航空会社がご希望ですか? JALがいいですか?」

「どごでも いいんだげんと....」

どこでも良いと口では言ったが、東南アジアの出張にはシンガポール航空と決めているのである。

とにかく、シンガポール航空の客室乗務員は美女揃いなのだ。

それに、体の線がそのまま現れる民族衣装風のコスチュームがグッドである。

通路を行き来する度に、腰の近くまで切れ目の入ったスカートからチラリと覗く脚がドキドキさせるのである。

もちろん、チェックイン時に通路側席を予約することを忘れてはならない。


「曜日によってはANAも飛んでいますね」

催促する口調の栗原さんである。

少し考えたようなふりをして小声で答えた。

「シンガポール航空が いいんねが...」

「シンガポール航空ですね」

念を押すように栗原さんは繰り返し、ニヤリと笑い一言付け加えた。

「部長の会社の人は 皆さんシンガポール航空がお好きですね~」


そう言えば、先月社長が出張したときもシンガポール航空だったなぁ....

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