部長の独り言

第48話 世界一のレベル

「わぉ！　こりゃ　すっごいごど　おぎるんだなぁ」

Viet Nam Newsの英語版を読んでいた田中君が声を上げた。

「なにしたのや？」

「ほれ　こご　読んでみろ　すごいごど　かがったから」

三面記事と思われる部分を指さしながら新聞を渡された。

英字なので正確に読み取れない部分もあるが、概ね次の様な内容が掲載されていた。

浮気に激怒した妻が夫のペニスを切断、その翌日には難なく縫合手術に成功。

ホーチミン市の115人民病院は、同病院の医師団が8日夜に切断された男性の性器を再度つなぎ合わせる手術に成功したことを明らかにした。警察によると、被害者は同市在住のL.Q.Pさん（42）で、妻のPさんが夫の浮気を疑い、ビールをたくさん飲んで酔いつぶれた後に妻が剃刀で夫の性器を切断したという。

ベトナムでは、「男の浮気の原因を根本から絶つ」と、しばしば夫や恋人の性器切断が報じられる。

浮気の報復にしては壮絶すぎるが、あまりに性器切断が頻発するため、医療技術が高くないベトナムでも、切断されたペニスの縫合手術に関しては世界一のレベルである。

「こだなごと　あるんだなぁ...」

「ベトナム女性は　嫉妬深いんだべが？」

「日本でも　昔　阿部定事件って言うの　あっけべした」

確かに日本でも同様な事件が起きたことはあるが、ベトナムのように頻発することは無いようである。

ベトナムで浮気をするには、切断される覚悟が必要と言うことなのだろう。

翌日の昼休み、食堂で一緒になったトイ君に新聞の内容について尋ねてみた。

「よぐ　起ぎるんだが？」

「ハイ　トキドキ　新聞ニ　カイテアリマスネ」

「んだがした...」

「ホーチミンノ　ローカル新聞ニハ　コノ男ハ　二回目ダト　カイテアリマシタ」

「え～ぇっっっ！！！」

それにしても、二回も切断されるなんて、この男は相当根性あるな、と思うニュースであった。