第79話 納豆

我が家のお正月の朝食は、例年のごとくお雑煮で始まった。

朝寝坊をしてお雑煮を食べコタツに入ってゴロゴロする、なんと幸せなひとときなのだろうと思っている矢先に悪友の訪問。

「おー 雑煮 食ったんだっけがした」

「くーが?」

「く」

短い会話の中に山形弁の合理性を感じるのである。

「納豆もず あっけど くが?」

「おれは 納豆に もずへっだの かねんだ」

「なして?」

「納豆さ もずへっで くなて 邪道だべ 納豆には 俺こだわてんだ」

「なに ほだえ こだわんのや?」

「納豆は 納豆だけで くのが 正しいくいがだなんだ まじぇもの へっで くなて素人のやるこどだべず 醤油だけで くのが通というもんだべ」

納豆に正しい食べ方など有るとは思わなかった。

彼いわく、学生時代に2ヶ月以上も納豆とご飯だけで生活した経験があり、その時、納豆の食べ方に悟りを開いたとのことであった。


私も子供のころから納豆は好きな方で、朝食には欠かさず食べていた。

食べ方にも色々あるが、たまご・大根おろし・ねぎ等を混ぜるのは一般的で、海苔の佃煮などにも合うようである。

納豆を海苔でくるみ、天ぷらなどにしても美味しいのである。時には味噌と少々の砂糖を混ぜる時もある。

これほど食べ方にバリエーションの多い納豆なのに、悪友は邪道だと言うのである。


しかし、この悪友は学生時代に何ヶ月も納豆だけで生活したため、栄養失調になり、痙攣を起こして倒れ救急車で運ばれたのである。

そんなことなどすっかり忘れ、納豆の材料から製造過程・栄養・食べ方などを2時間も講義し、ほろ酔い気分で帰っていったのである。

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