第54話 ごめんなさい...
ベトナム語を正確に発音するのはとても難しい。
スペルが同じでも、母音や語尾を上げたり下げたりで区別されているのである。
日本語はイントネーションが曖昧でも通じるのだが、ベトナム語は母音の上に付いている記号で強弱やイントネーションの違いを表しており、その違いで意味が変わってくるのだから厄介である。
人の名前も、スペルが同じで発音が違う時がある。
したがって、名刺を貰ったときなどは本人の前で名前を発音し確認するようにしている。
ベトナム大蔵省財政局の役人と会うことになった。
事前連絡では、留学経験のある女性部長とのことである。
打ち合わせ内容をチェックしながらソワソワ待っていると、予定時刻を少し過ぎたころ部下を引き連れやって来た。
小柄な体格に黒いブリーフケースを持った姿は、いかにも役人と言う感じがする。
ニコニコした表情にホッとしながら、差し出された名刺に目をやると、名前の前にDr.が付いている。
(ほぉ~ ドクターなんだがした...エーと名前は...)
いつもの癖で、名前を確認するため声に出した。
「え~ ファックさんだなっす?」
「.....」
返事がない?何か間違ったのだろうか?
「え~と ファ...アアアア アハハ こりゃまずい...」
「My name is not Fuck.!!」
「フックさんか...」
ごめんなさい...フックさん...
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