部長の独り言

@bucyo2021

第一章 山形編

第1話 口が滑った

毎年恒例となっている一泊二日の人間ドックに行った。

今年は副社長と一緒の受診である。

昨年は、肝機能や血糖値などにも異常は無く、せいぜい「太りぎみ」と言われた程度だったが、今年はどんな結果が出るのだろうか。

最近一ヶ月程度は摂生したつもりだが、摂生すること自体健康を気にする年になったのかと少し寂しい気持ちになる。


朝8時を少し過ぎた頃、県立中央病院内にある成人病センターに着いた。

病室には、既にパジャマに着替えた副社長がベッドに座り新聞を読んでいる。

「おはよっす! 副社長はどごがわれどごあるんだがっす?」

「血圧 高いんだな ほれに肝機能もいろいろ引っかがるなぁ」

「んだがっす 血圧高いんだがしたぁ」

「んだげんと ドックさ来っど 正常になるんだ」

「ほ~ ドックさ来っど正常になるなて 仕事合わねのんねの?」

「....」

つい口が滑ってマズイ事を言ってしまった。

副社長に「仕事が合わないのじゃないか」などとは、仕事をやめたらと言っているのと同じである。

人事異動の季節だけに、口が滑っただけでは済まない事になる。

(まずいなぁ 困ったなぁ...)

いろいろ考えているうちに動悸が激しくなり血圧が上がってくるのが分かる。


「みなさん おはようございま~す! それでは血圧測定からはじめますね」

(あぁぁ 一ヶ月の摂生も無駄だったか...)

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