第16話
魔物の発生数が増えてからしばらくして。
「アマリリス・コーネリアです。よろしくお願いします!」
魔術学院に、新たな編入生がやってきた。アマリリス・コーネリア。コーネリア伯爵の一人娘。一ヶ月ほど前から城下町で浄化の魔術を持っていると噂になっており、最近教会が正式に認めたもう一人の聖女である。のだが。
「……はい?」
(え、ええ!?もう一人の聖女とか、ゲームにはいなかったよ!?)
ちら、と隣を見てみると、困惑した表情のバルトローズとリュシフィアが小声でやり取りをしていた。
アマリリスは、自己紹介を終えてそのままバルトローズの元へと歩く。
「よろしくお願いしますね、バルトローズ様!」
「は、はあ……?」
本来であれば、平民が王族や貴族に馴れ馴れしく声を掛けるなど不敬である。だが、そんなことはお構いなしといった様子で、アマリリスはバルトローズだけでなく、クラスの男子生徒に次々と声をかけていく。
「な、なんだこれ……」
波乱の日々の幕開けであった。
「つ、疲れた……」
放課後。王城の一室にて、マリファはルトレイス、バルトローズ、リュシフィアと共に簡易報告会と称してアマリリスの様子を相談していた。
アマリリスは、マリファの補佐役として学校へ編入したらしい。授業や実演練習の間、マリファの側を離れることはなかったが、その可愛い見た目に惹かれたのか、誰かしらの男子生徒が隣にいた。しかも、ほぼ全員それなりに身分の高い貴族であり、婚約者がいる男子生徒だ。教師から咎められるかと思いきや編入初日だからと大目に見られており、男子生徒達も居心地が良さそうにしている。
「……と、言う訳なのです。ルトレイス殿下、どう思われますか?」
「……あくまで、学院内では身分差はないものとして扱われているものの、流石にそれはちょっと不味いんじゃないかな。……バル、話しかけられたんだっけ?どうだった?」
「それが、普段なら不快に思ってたところが全然そうは思わなくてだな……居心地が良い、って感想、まさにそのとおりなんだよな。不思議なことに」
「……え、それって大丈夫なのですか?」
「全然。今思えば何でそう思ったのか分かんねぇ」
そう言って、頭を抱えるバルトローズ。その様子を見て、それまで考え込むようにして黙っていたリュシフィアが、ゆっくりと口を開いた。
「……それ、恐らく魅了魔術ですわよ」
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