3章 悪意と好奇心と恋心
#21 佐伯が語る大森タロー
タローとは中1の時に入部したバスケ部で知り合った。
最初の印象は、いつもヘラヘラしてて軽そうな男。
でも今のイメージは、面白くて怖いもの知らずのコミュ力モンスター。
昔から、口が立つというかコミュ力が半端ないというか、誰とでも仲良くなるスキルが高い奴だった。
トラブルとか起きても、そのコミュ力でどうにかしちゃってたし。
入部して間もない、1年生なんてランニングくらいしかさせて貰えてないような頃に「女子バスの2年に可愛い子いる!」とか騒ぎ出して、その日の内に一人で突撃するような奴だった。
それで最初ドン引きしてたその女子バス2年の先輩もタローと喋ってる内にゲラゲラ笑いだして、仲良くなってた。
それからは部活中とかにその先輩がちょくちょく「タローがんばれ~」とか声かけるから、ウチの先輩たちが怒っちゃって、練習後に部室でタロー正座させてお説教するんだけど、結局その先輩たちもタローに言いくるめられて、最後ゲラゲラ笑って仲良くなっちゃってるの。
周りの俺たちも、そんなあいつ見て呆れながら笑ってるんだけど、心の中じゃみんなあいつのこと認めてた。
俺も「コイツすげぇな」って何度も感心してた。
今思うと、いつも飛ばしてたなあいつ。
タローのことでもう1つ語るなら、タローは頑なにLINEをやらない。
あいつ先輩後輩関係なくめちゃくちゃ顔広かったから、色んな人からLINEのID聞かれてたけど、いつも「やってない」「やらない」「必要ない」って拒否ってた。
なんでやらないの?って聞いても「医者に止められてる」とか「昔ペットの犬がLINEに殺された」とか「LINEやると寿命縮まる迷信信じてるから」と訳わからん下手くそな言い訳してたけど、多分チャットよりも自分の口で喋りたいからだと俺は思ってる。
そんな感じでタローとは同じ高校に入って、かれこれ4年以上の付き合い。
相変わらず飛ばしているようで、最近彼女出来たって聞いたと思ったら、今度はその彼女泣かしたクズとか噂が流れて、まさかタローが?とか思ってたらクラスで吊し上げにされたその場で彼女とっちめて全員黙らせたとか。
やっぱすげぇわタロー。
面白いわー。
っと、丁度タローから電話だ。
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