第3話 前世帰り
なにが、なにが起こっているんだ?
現実へと帰還したはずの俺の身体がおかしい、手足の感覚が消えて、倒れているのか視点が低い。
「あ、ああー」
声は出ているのだろうか?出ているといいな。物理的に反響しているし、うん、出ていることにしよう。
それに周りの様子もおかしい。全身から毛を生やし耳や尻尾がある人や、耳が長いエルフのような人もいた。
まさか異世界!?いいや。建物の壁には日本語が書かれている。きっと日本だろう。
そうだ。ユウイとマオちゃんは?
ユウイは地面に倒れている。ユウイ、ユウイ起きろ。手足が動かないため、語りかけることしかできない。
「う、うぅ」
よかった生きているようだ。それにしてもなにが起きているんだ?再びそう疑問の思った時に、前方にいた大柄の男が突然呻き始める。
「グ、グウウウウ!!!ダレカ……タスケテ……クレ……グウウウウ!!!」
大柄の男の身体はさらに大きくなり、身長が2倍〜3倍、さらに大きくなり、遂には数十メートある建物に天井に頭がついた。男の目は一つ目になっている。ゲームで言うところではサイクロプスと言った方がいいだろう。
あ、やばい。天井が崩れる。
周囲に人々が瓦礫に押し潰されそうだと感じた時に、近くにいたマオちゃんが立ち上がり、黒革の本を開く。
「プリズン」
マオちゃんがそう言った。見た目は変わってなくてもマオちゃんも前世の記憶が蘇ったのだろう。
無から生まれた鉄格子が、周囲の人々を守る。すごい。俺にはそんな力はないと言うのに、いや、そうだ。マオちゃんの前世の力が引き継がれているとすれば、俺もミミックの力は使えるのではないか?
そう考えて口を開き、落ちてくる瓦礫を意識すると口の中にどんどん吸い込まれていく。不思議な感覚だ。モグモグ味はしない。
マオちゃんはこちらを見て、目を見開き驚きの表情をしている。それもそうだろう人間が瓦礫を吸い込みとか、カ○ビィではあるまいし。
しかし、身体が動かないとどう言うことだろうか?そう疑問に思っているとスマホが飛んできた。そして一瞬、一瞬だったがミミックが映った。ボリ雑巾のような箱に舌と目が合った。
え?俺ミミックなん?何で!?なんでぇぇぇ!!!???
大声が叫んだと思うと
ズボボボォォォォォ!!!
吸い込んだ瓦礫が逆流して、吐き出した。それは吸い込んだ時の速さ。重量で、サイクロプスの目に激突した。
サイクロプスは倒れた。
そこで俺は気を失ってしまう。どうやら力を使いすぎたようだ。ふっ俺としたことが……
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「……なさい……起きなさい!」
は!
女性の声が聞こえて目を覚ます。俺はまた別の場所にいた。ここは研究所?
前には白衣を着た人達がおり、中でも眼鏡かけた女性が異様な雰囲気を放っている。
身体はやはり動かずに手足の感覚がない。
「あー、えっとおはようございます?」
俺が喋ると白衣をきた人たちは、「喋ったぞ、新生物だ」「新しい研究対象だ」
「ふふふ、私のものにならないかなぁ」
とネチャネチャとした目線を俺に送る。
「……君しゃべれるの?箱なのに?」
そうか俺は確かミミックになっていたんだな。驚くのも無理はない。
「そうです。実は元人間なのですが」
「そうか人間だったのか。やっぱりな」
「やっぱりなとはどう言うことですか?」
「実は君に話してもしておかなければならないことがある。これを見て欲しい」
突然、部屋は暗くなり、目の前のガラスが映像に変わる。
ブロロロロ(ヘリコプターの音)
『皆さん、ご覧ください。神話にあったとされるサイクロプスが、今わたし達の目の前に姿を現しました』
ヘリコプターに乗っているアナウンサーが、上空から見下ろしている。
下には俺が倒した、サイクロプスが建物の上に倒れ込んでいる。ニュースの右上には、″新生物サイクロプス発見!″という文字が書かれているが、
バアアアアンン!!!!
数秒後、アナウンサーが乗っているヘリコプターが豪快な爆発音と女性の悲鳴とともに映像が途切れる。
最後に映っていたのは、ツノの生やし空を飛ぶマオちゃん姿だった。
まさか……マオちゃんが、ヘリコプターを爆破した!?考えたくもない。しかし前世の魔王の力を持ってすれば……可能……。
「今、見てもらった映像。ヘリコプターに乗っていた人達は多少の怪我はあれど無事よ」ほ……よかった。マオちゃんの人殺しの可能性はないようだ。
「それで私達は聞きたい。君達は何者?」
「こっちが聞きたいよ」
「え?」
「え?」
白衣をきた女性とミミックになっちまった俺は目線を合わせたまま、素っ頓狂な声を出し両者固まった。
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