第17話
(校舎の花壇に人が落ちてきたから、一人で見に行ってたの)
「え!?」
僕はそれを読んで、真っ青になってひどく驚いた。
「誰が落ちてきたの?!」
藤堂君と篠原君が走ってやってきた。亜由美はランドセルにA4のノートを無情にも仕舞ってしまった。
僕は訳も分からずに叫びそうになったけれど、さすがに藤堂君と篠原君もいるし、亜由美が可哀想だったから、我慢して学校へとみんなと走った。真っ白な入道雲の下で、それと反対に真っ赤な顔をして走った。一時間目がもう始まる時間になっていた。
学校の階段を駆けていくと、亜由美と別れた。4年3組へと走る亜由美の後姿を見て、休み時間に、あるいは最悪、今日の帰りに何がなんでも花壇に誰が落ちたのか聞いてみようと思った。
「1番―!!」
「2番―!!」
藤堂君と篠原君が教室へと入る。僕は三番目に教室へと入った。羽良野先生はまだ教室にはいなかった。自分の机の方へと急いでいると、ふと気になることがあった。
僕の席の机の上に白いハンカチが置いてあって、何かの上に被さっていた。
白いハンカチの膨らみからして、僕は嫌な感じがした。
白いハンカチを取り払うと、人形の足があった。
切断面には赤黒い何かが付着してある。
周囲の子たちは気づかないようで、隣の席とかで話声を大きくしていた。藤堂君と篠原君も席についたら教科書をランドセルから引っ張り出している。
みんなこっちを見てはいない。
僕は急いで人形の足を机の中へと入れた。
羽良野先生が教室へと入ってきて、黒板に向かい。国語の授業を始めるためチョークを持ち出す。僕はすぐに空想の世界へと入っていった。
ちょっとうるさい休憩時間になると、僕は真後ろの女の子に聞いていみた。
「僕の席に置いてあった白いハンカチって、いつ頃からあったのかな? それと誰が置いたんだろう?」
後ろの子は天野さんという女子で、校内のマラソン大会で4位を記録していた。
「知らないわ。私が教室に入ったときには置いてあったの」
天野さんは色とりどりの折り紙を広げていた。
「それじゃあ、一番この教室へ早くに入った子に聞けばいいのかな?」
「それなら戸田さんよ」
僕は窓際の藤堂君の後ろの席の女の子に聞きに歩いていった。
戸田さんだ。
「僕の机に白いハンカチが置いてあったけれど、誰が置いたか見ていたら教えて?」
僕は白いハンカチを持っていた。窓の外にはカラカラの空に白い雲が泳いでいた。何気にその子を観察した。クラスで以外と有名な子で、父親が大企業の副社長なのだそうだ。「母を求めて3000里」を読んでいた。大きな瞳を細めて僕の顔を見てはひそひそ声で、
「わからないわ」
そう一言話すと、視線を本へと戻した。まったく興味を持っていなかったようだ。何か知っていたとしても嘘は言わなそうだ。僕は考えた。
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