第8話

 そのカエルのような人は険しい顔のままだ。きっと、重大な事件から性質の悪い悪戯か何かへと考えが傾いたようだ。

「違うかもしれないけど、こんな悪戯しちゃ駄目だよ!」

 語気を強くした声を聞いて。


 僕は確認をあまりしなかったことを悔やんだ。きっと、人形の手も子供たちと一緒に埋められていたんだ。

「ぼく、どこで見つけたんだい?」

 四角い顔の警察の人は優しい調子で話し出した。


 僕は決して悪戯をするような子じゃない。

「あのね……実は裏の畑で……」

 僕は顔を紅潮しながら意地を張って、警察の人に本当のことを言ってしまった。

 裏の畑でバラバラの子供たちを見つけたことと、それでも生きていることを。

「内田さん。子供の言うことですから……。それに、こんなに精工な人形の手なら、大人でも間違えるかも知れませんよ。それに、血のりもあって、何だか不気味ですね」

 四角い顔のお巡りさんが机の書類をどかしながら、目に微笑みを浮かばせていた。

「でも、何かの間違いなのかもしれないけれど、今後このようなことが起きるのは非常によくないですよ。斉藤さん」

 内田は厳しい表情を緩めなかった。


 斉藤と言われたお巡りさんは、優しい調子で僕の住所と電話番号をよく聞くと、書類が散乱している机に設置してある電話を掛けた。


 電話に出たのは多分、母さんだ。

 今の時間はおじいちゃんと母さんしか家にいない。

 おじいちゃんは二階で番茶を飲みながら、テレビを観たり、たくさんあるトロフィーを愛でているはずだ。


 僕は悔しくて涙を流した。きっと裏の畑に行けば子供たちが埋まっているはずだ。今は心が捻じれそうなくらいの悔しさを押し殺して黙っていよう。




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