美味い晩餐

婆ぁが飯を飲み込んでふふっと笑うので、男は嬉しくなって


「旨いだろう。おっかぁ。これは棟梁のおかみさんが作ったそうだよ。」


とふざけて声を掛けてやった。


すると婆ぁは喉だけでクスクス笑うと、出会ったはじめの晩のようにふしゅるふしゅると言ってまた、

一筋涙を流した。


何でぇやっぱり美味くて泣いたじゃぁねぇか。


何だあん時のあれも一丁前にありがとうなんざ言ってやがったのか。


「よせやい、照れるじゃあねぇか。」



と言って婆ぁの口元を手拭で拭いてやり、食った食器を片付けると外も十分暗くなってきたので、

気持ちのよさそうに眠る婆ぁの隣で古ぼけた袢纏をひっかけてごろりと横になった。

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