米の飯

くたばりかけの婆ぁだ。


貯めこんでも仕方あるまい。


とっとと食えそうなもんをいただいて家から出よう。


小せぇ釜戸のある厨のような場所を見つけて、まぁこんな狭ぇ家に生意気なもんだと思いながら、

暗所を覗いてよくよく見ると、干からびた山菜と大根があった。


生意気なことに茶色くなってひび割れちゃいるが小さな袋の中に米まで置いてあるときた。


よくよく探しゃあ味噌まであるじゃぁねぇか。


婆ぁの一人暮らしにしちゃ贅沢だ。


この味噌と米を煮たらとっととずらからねぇとなぁと考えながら、

久々の米の飯を食えるとなりゃ今すぐ逃げる気には更々なれなかった。


男に生まれたがいい暮らしなんざした事が無ぇので、

男はガキの頃に何度か炊事を手伝わされたことがあった。


飯作りなんざちび助の頃に奉公先から逃げ出して以来久々だ。


米を洗って適当に水につけている間、暇を持て余した男はほっぽっておいた着物を軒に吊るすと、

ぼろぼろの板の上にごろりと寝転がった。


考えてみると不思議だったのだ。





食い物の具合や汚く汚れ切った老婆を見ると、

もしかしたらこの老婆は2,3日前に家人に捨てられたのかもしれぬ。

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